【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第98章 ◇第九十七話◇悪魔との交渉【恋の行方編】
本当に、証拠を持っているのじゃないかという不安に襲われる。
でも、まさか、そんなことが出来るわけがない。
少し前まで民間人で、今だって調査兵団なんていう小さな組織の下っ端兵士なんかに、そんなことー。
「調査兵団は調べることのプロなのよ。
私の上官は、あなたが私の婚約者だった頃から、もう全て知ってたわ。」
「…嘘だ。」
嘘だ、そう思っている。
いや、そう信じている。
でも、調査兵団が調べることに関してプロだと言われれば、それも正しい。
しぶとく粘り強く、バカみたいに壁外に出ては、巨人についての知識を得ようとしている調査兵団の兵士達。
実際、彼らがそうやって命を賭して手に入れて来た情報は、人類の小さな刃くらいにはなっている。
彼らなら、壁の中の人間ひとり調べ上げるくらいのことは容易いのじゃないだろうかー、ふとそんな考えが頭をよぎる。
「証拠を握り潰してほしいのなら、私の願いを聞いて。」
「…嫌だね。もし君がその証拠を持っていても、
その証拠ごと握り潰せばいいだけだ。」
気持ちで負けそうになっていたが、ルーカスは強気に出た。
今までだって、負けたことなんてない。
今回は、こそ手に入れられなかったが、憎い男を世間から銃弾でボロボロにして路頭に迷わせるという計画はうまくいっている。
せっかくの勝利を、こんなところでみすみす捨ててたまるものか。
「そう、残念ね。
そういえば、今、私の上官はシェーンハウゼン伯爵の屋敷にいるのよ。」
「は?」
「シェーンハウゼン伯爵のお孫さんが、巨人にとても興味がおありなんですって。
私の上官は巨人オタクで、調査兵団の中でも巨人について最も博識なの。
だから、いろんな話を聞いてみたいってお呼ばれされているのよ。」
「…何が言いたい。」
「別に?ただ、巨人のお話をしているときに、
ポロッとあなたの話をしてしまうかもしれないとは思ってるわ。」
ルーカスは、眉を顰めた。