• テキストサイズ

【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第96章 ◇第九十五話◇果たし状【恋の行方編】


大きな音が響いた後、部屋の中がシンと静まり返る。
私を睨みつけるハンジさんから放たれる怒りが、この部屋をピリピリした空気で包んでいた。
こんなに怒ったハンジさんを、私は初めて見た。
この人は、自分の為ではなく、誰かのために怒る人なんだ。
大切な人の為なら、我を忘れるくらい、怒ることが出来る人。
それなのに、今、真相を闇に葬ろうとしている。
私のために、いやきっと、リヴァイ兵長のためにー。
仲間想いのハンジさんは、絶対にそんなこと望んでなんかいないのにー。

「分かってます。」
「分かってないっ!!私達がどんな思いで…っ。」

ハンジさんが、怒りと悔しさ、悲しみに満ちた表情で、唇を噛んだ。
握った拳は、振り上げる場所を貰えず、デスクの上で震えていた。

「どんな思いで…、真相を闇に葬ったのか、ですか。」
「なに…?」

怒りに満ちたハンジさんの瞳の上で、眉が少し上がった。
戸惑いの色も出てきたハンジさんに、私は続ける。

「爆弾事件の真犯人は、ルーカスですよね。」

まだほんの少し、私は信じていたのかもしれない。
だから、ハンジさんが驚いた顔をした後、何と答えればいいか分からないような表情で、目を反らしたのを見て、何かが崩れ落ちるような音を聞いた。
それは、確かに過去に愛した人がそんな人だと信じたくなかったからなのか、自分のせいで人が死んだという事実を受け入れられなかったからなのか。
きっとそれは、そのどちらもで、私は拳を握り、真っすぐにハンジさんを見た。

「ずっと、気になっていたんです。」
「何をだい。」
「廃工場で、モーリという男も、金髪の男も、大金を貰ったと言っていた。
 他の誰かが、彼らに指示を出しているのは明らかだった。
 そして、その誰かは、私のことを知っているみたいでした。」
「それで、それが、君の元婚約者だって言うのかい?
 馬鹿馬鹿しくて、話にもならないね。
 あの事件は、主犯のモーリを含めた犯人グループの爆死で解決だ。」

これで話は終わりだー、とばかりに、ハンジさんはデスクの椅子を引いて腰を降ろすと、私に背を向けてしまった。
/ 1058ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp