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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第13章 ◇第十二話◇疲れる休日【調査兵団入団編】


自室のベッドの上に背中から倒れこむ。
この固いベッドにも少しずつ慣れてきた。
環境に適応していく人間の力というのは偉大だと思う。
だって―。

(私が巨人を討伐したのか…。)

右手を天井にかざす。
今日行った初めての壁外任務で、私はこの手で巨人を5体討伐した。
最初は、ハンジさん達の技術をただただ見てるように指示された。
彼らは本当にすごかった。
トロスト区奪還作戦や掃討作戦のときに見た駐屯兵達とは何もかもが違った。
身体の動かし方、ブレードの構え方、立体起動の扱い方、そして、覚悟。
臆することなく巨人に立ち向かい、どうすれば巨人に勝てるのかを、彼らは頭と身体で理解していた。
巨人を圧倒するその姿が勇ましく、私には到底そうはなれないと、なんとかなるんじゃないかという浅い考えは、底が抜けて落ちていった。
それなのに、帰還中に突然ハンジさんから、今から1人で巨人を討伐するように言われるから、死ねと言われてるのかと思うほどショックだった。
だが、まるで、あの男の子に告っちゃえよ!と煽るクラスの男子みたいに背中を押されて巨人の前に出されたら、好きな男の子の前でウジウジと頬を染める女の子のような仕草をしている場合ではなくなる。
なんたって、振られるのが分かっているどころか、殺されてしまうのだから。
だから、必死にハンジさん達がどうやって巨人を倒していたのかを思い出し、なんとか倒すことが出来た。
そんなことを続けているうちに、巨人を討伐する、ということに抵抗がなくなっていた。
確かに、巨人は怖い。あのおぞましい顔もいで立ちも、すべてが気持ち悪い。
でも、初めて巨人を前にした時のようには、身体はもう震えない。
そっと、自分の身体を抱きしめる。

(私はもう…。)

今までの普通の女には戻れない。
朝寝坊して、自分を叱る母親と軽い口喧嘩をしながら遅刻だと慌てて家を出る。仕事場ではヒルラと無駄話に花を咲かせて、仕事が終われば友人と遊んだり、ルーカスとデートしたり。
もうそんなことは出来ない。
失って初めて私は、自分がどれほど幸せだったのかを知った。
今さら気づいたって、もう二度と戻れないのに。
それは私を調査兵団に引き込んだハンジさん達のせいなのか。
いや、違う。
自分の身体を抱きしめる腕に力がこもる。
私の、私達人類の幸せは、全て巨人に奪われた。

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