【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第92章 ◇第九十一話◇真相は闇に葬れない【恋の行方編】
足が震えて、立っているのも、やっとだった。
(う、そ…。)
頭が真っ白になった。
でも、これでようやく、ずっと心に残っていた違和感が解消されていくのも感じていた。
あの日からずっと、気になっていることがあった。
モーリと金髪の男たちの会話ー、そこに時々、第三者の存在が出ていたはずだった。
それなのに、世間に発表されたのは、モーリが主犯で、あの場にいた犯人全員が爆死。それで、解決だった。
でも、モーリが主犯なら、あの廃工場の爆発の意味が分からなかった。
新聞記事と調査兵団の報告では、リヴァイ兵長から逃げられないと悟ったモーリが自爆したとあったけれど、そうではないことを私は一番知っている。
あのとき、モーリの方が圧倒的有利にいたのだ。
『僕は、君の為なら何だって出来るんだよ。』
ルーカスがそう言って微笑んだ時の得体のしれない恐怖が蘇る。
あれは、人も殺せると、そう意味だったというのかー。
(あぁ、そうか…。)
やっと分かった。
あの日、パーティー会場で、リヴァイ兵長がどうして私に絶対に離れるなと言ったのか。
なぜ、ダンスに誘うルーカスの元へ行かせるのを拒んだのか。
あの廃工場で、私を身体を張って守ったのも、爆発が起こることを最初から知っていたからだったのだろう。
きっと、リヴァイ兵長は、いや、エルヴィン団長達は、初めから爆弾騒ぎの主犯がルーカスだと知っていた。
でも、私のために、それが分からないように隠していてー。
『俺達に襲われたくなかったら、魔法の呪文を唱えるんだったろ?』
『君がツラいとき、彼ではなくて、僕の名前を呼んでごらん。
彼には無理でも、僕の名前を呼んでくれさえすれば、どんな困難からも助けてあげる。』
蘇ってくる、伏線を含んだ言葉達。
無理やりはめ込まれていたパズルのピースが外れ、正しいピースが次々とはめられていく。
私はあのとき、ルーカスの名前を呼ぶべきだった。
そうすれば、少なくとも、リヴァイ兵長があんなひどい目に合うことはなかった。
すべて、元凶は私ー。
私のせいだったー。
いつの間にか、誰もいなくなっていた静かな廊下で、私ひとり、動けずにいた。