【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第92章 ◇第九十一話◇真相は闇に葬れない【恋の行方編】
どうせなら本当に書類仕事の手伝いでもしようー。
そう思って、ハンジさんの執務室兼自室に向かったのは、間違いだった。
廊下を曲がる直前、ミケ分隊長が他の分隊長達と話している声を聞いてしまった。
「それで、王都はリヴァイをやめさせろと言ってきてんのか。」
「あぁ。今度、王都に出向して、最終会議だそうだ。
検査結果は問題なかったが、まだ骨はくっついていないから
もうしばらく様子を見て、長距離の移動が堪えられるまで回復したらな。」
リヴァイ兵長の進退についての話だと分かって、私は足を止めた。
廊下の角に背中を合わせて、息を潜める。
(王都が…?)
リヴァイ兵長は人類最強の兵士だけれど、だからって、なぜ王都が彼の進退にまで口を出すのか。
体裁を気にする憲兵なら分かる気もするけれど、私は訝し気に眉を顰めた。
今回の事件は、リヴァイ兵長への逆恨みが動機だったかもしれない。
でも、逆恨みごときで、兵法会議にかけられるわけでもない。
それに、ただの過去の噂話に過ぎないじゃないか。
「リヴァイが抜けるのはきついな…。アイツは知ってるのか。」
「あぁ、構わないと頑なだそうだ。」
「どうしても、を傷つけたくねぇんだな。アイツがな…。」
聞こえてきたのは、私がこの世で一番馴染みのある名前だった。
(私?私がどうして、リヴァイ兵長の進退に?)
首を傾げる私のためみたいに、ミケ分隊長の声が答えを教えてくれた。
「自分の元婚約者が、自分を取り戻すために起こした爆弾騒ぎで
死者まで出したとなれば、は今度こそ潰れるだろう。
その上、握り潰される真相なら、なかった方がいいとリヴァイが判断した。」
「俺達も、アイツがそう覚悟を決めて決断したのなら、何も言えねぇしなぁ。」
「そもそも、王都親族である貴族に逆らうだけの刃を、我々は持っていない。」
「に頼むことも出来ねぇしなぁ。」
「あそこでは死ぬはずだった。それが、モーリが復讐心を燃やして
リヴァイを呼び出す手紙を残したおかげで、助け出すことが出来た。
それだけで、アイツは満足してるんだと思う。」
「どうにか、リヴァイも助ける方法はないもんかね。」
声を上げそうになって、両手で口を抑えたところで、どうせ、喉の奥から空気が漏れるだけだった。