【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第88章 ◇第八十七話◇真相を握り潰すなら君の笑顔のため【恋の行方編】
ベッドに歩み寄りながら、彼女の頭にリヴァイの手が添えてあるのに気づいた。
ハンジが来るまで、ずっと自分についていてくれたの頭を撫でていたのかもしれない。
「てめぇが静かにしてりゃな。」
「…悪かったよ。ごめんって。」
ハンジは眠るの隣に椅子を持って行き、腰を降ろした。
そして、持ってきた書類をリヴァイに差し出す。
「昨日、廃工場で何があったかに聞いた後、
エルヴィン達と協議して、報告書を作った。
それでいい?」
受け取ったリヴァイは、少し眉を顰めたが、概ねこういう内容になることは想定していたのか、驚く様子はなかった。
「あぁ、構わねぇ。」
やっぱりー。
リヴァイに返された書類を受け取り、ハンジはへと視線を落とす。
何も知らず眠るの頬に、涙が流れた痕を見つけて胸が痛んだ。
彼女は今回のことで、リヴァイを瀕死に追いやったのは自分だと責めている。
その上、この事件の真相を知ったら心を壊してしまうかもしれない。
でもー。
「でも、私達は本当の黒幕を知ってる。
ちゃんとそこまで報告書に入れた方がいいと思うんだ。」
「どうせ握り潰される。」
「そうかもしれないっ!でもっ!」
「声が出けぇ。が起きちまうじゃねーか。」
「ごめん…。でも、今のままじゃ、主犯のモーリの逆恨みの相手であるリヴァイが世間から責められる。
もしかしたら、事態を収拾したい憲兵が、君の兵士としての立場を奪うかもしれない。
調査兵団としても、存続するために君を切り捨てるしかなくなる。」
「構わねぇ。」
「構うよっ!あ、ごめん。でも、調査兵団には、いや、人類にはリヴァイの力が必要だ。
それに、本当に悪いやつが罰を受けず、何も悪くないリヴァイやが…、
そんなの、私は許せない…!」
ハンジが悔し気に唇を噛む。
書類を持つ手にも力が入り、クシャリと皴が寄る。
でも、リヴァイは、そんなことどうでもいいみたいな顔で、ベッドの上に乗るの手首に医療兵が貼った傷テープに触れた。
「は、手首以外に怪我はしてたか?」
「いいや、君が身体を張って守ったから、手首以外は本当にまっさらの無傷だ。」
「そうか。」
リヴァイは、心底ホッとしたような顔で、の頭を優しく撫でた。