【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第88章 ◇第八十七話◇真相を握り潰すなら君の笑顔のため【恋の行方編】
翌日、エルヴィンの執務室兼自室を出たハンジは、医療棟へ向かっていた。
まだ昨日の事件の余韻の残る兵舎は、それでも通常の一日を取り戻そうとしているようだった。
ただ、兵士達の誇りであるリヴァイの重傷という事態に、誰も不安を隠せていない。
一応、もういつも通り、訓練や雑務の任務を行うように分隊長から所属班の班長を通して指示が言っているはずだが、すれ違う兵士達の顔はみな、どこか浮かない表情をしている。
リヴァイの容態が気になって、訓練にも身が入っていないようだった。
(仕方ない、か…、)
パーティー会場での爆発は、貴族5名の命を奪い、たくさんの負傷者を出した。
調査兵団の兵士からも数名の負傷者が出ている。
命に別状がないことだけは不幸中の幸いだったが、どちらにしろ貴族に死者が出ている時点で、大惨事であることに変わりはない。
リヴァイの容態もだが、調査兵団のこれからに不安を持っている兵士も少なくないはずだ。
爆弾騒ぎの捜査を任されておきながら事件が起こってしまったことで、これからの調査兵団は世間から銃弾を受けることになるだろう。
もともと調査兵団に対しては否定的な考えを持った人間も多い中、存続すら危うくなるかもしれない。
どうにかそれを回避する策もないわけではない。
でも、きっと、それはリヴァイが望まない。
自分の立場が悪くなろうが、誰に後ろ指をさされようが、彼はきっとー。
リヴァイのいる病室の扉前までやってきたハンジは、一度、大きく深呼吸をしてから扉を開いた。
「おっはよ~~~っ!眠り王子様は起きたかな~~っ?」
ハンジは、笑顔を貼り付けて元気よく病室に入った途端、怖ろしい顔をしたリヴァイに睨まれた。
起きていたらしい。
上半身だけを起こし、痛々しい包帯だらけの身体が露になっている。
逆に、起きていると思っていたがベッドに突っ伏して眠っていた。
ベッド横の棚の上には、モブリットに運ばせた食事が乗っている。半分ほど減っているのを見て、とりあえず、口にはしてくれたことにホッとする。
「ごめん…。うるさかったね。眠り姫は、寝てるのかな?」
引きつった笑みを貼り付けて誤魔化した。