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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第87章 ◇第八十六話◇真っ白な病室で【恋の行方編】


「それは、を傷つけたくなかったからだよ。
 今だって、リヴァイは君の笑顔を守るために、必死に生きようとしてる。」

ハンジさんは、自分の手の甲を摘まむ私の手をそっと包み、引き剥がした。
そして、手の甲に幾つも出来た青い痕を見て、悲しげな表情を浮かべた。
モブリットさんも、医療兵も、リヴァイ班のみんなも、みんな、似たようなことを言う。
私が無事ならそれでいいのだと、リヴァイ兵長はそれでいいと思っていると。
でも、私はそう思わない。思えない。
だって、リヴァイ兵長は今、こんなに苦しんでいるのにー。

「どうしても、がリヴァイに対して申し訳ないと思うのなら、
 することは、謝ることでも、自分を責めて傷つけることでもない。
 ちゃんと寝て、食事をとって、元気にしていることだよ。」
「ここに…、いたいんです。」
「それは分かるけど、でも、だって怖い思いをしたんだから、
 ちゃんと寝て、心と身体を休めないと。」
「そばを離れたら…、リヴァイ兵長が消えてしまいそうで…、怖いんです…。」

もう一度、リヴァイ兵長が眠るベッドに向き直る。
そして、毛布の中に手を差し入れて、リヴァイ兵長の手をそっと包んだ。
そうすると、弱弱しいけれど、確かに、応えるようにリヴァイ兵長の手が包み返してくれた。
弱弱しい手の力が、平熱よりもだいぶ高い体温が、それでもリヴァイ兵長は生きているのだと教えてくれる。

「後で、モブリットにでも食事を持たせるから、
 ここにいてもいいけど、ちゃんと食べるんだよ。」

私が頷いたのを確認して、ハンジさんは病室を出て行った。
また、シンと静まり返った真っ白な病室で、2人きりー。
騎士はお姫様をひとり残して、彼女のためだけに死んだ。
でも、リヴァイ兵長は生きている。
そして、こんなにも深く、強く、苦しいくらいに愛してしまっていたのだと今さら気づく私は、あの絵本のお姫様のように、愚かでー。
早く、私を叱ってー。
どうして、もっとちゃんと指示に従えなかったのかって。
せっかく助けてやったんだから、泣くなって、叱ってー。




愛している、貴方を心から。
愛している、貴方が生きている、残酷で美しいこの世界をー。



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