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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第87章 ◇第八十六話◇真っ白な病室で【恋の行方編】


医療棟の中でも特に重傷な者が収容される病室で、リヴァイ兵長は眠っていた。
輸血を行ったからか、真っ白だった顔にも血の気が戻っている。
医療兵達の懸命な治療のおかげで、命は繋がった。
動かなかった左腕は、肩を脱臼骨折していたそうだ。
折れた肋骨が突き刺さった肺は破れていて、よく息が出来たと医療兵は驚いていた。
打撲や傷だらけの身体で、特に背中の大きく開いた傷から流れる血で、失血死寸前で意識を失ったのだろう、ということだった。

『もう大丈夫だ。リヴァイ兵長は強ぇ。生きてるんだからな。
 今は手術の時の麻酔で寝てるが、いずれ目を覚ます。心配するな。』

病室を出て行くとき、医療兵はそう言った。
でもー。

「ごめんなさい…。」

膝の上で自分の両手を握りしめ、私はただ、ひたすら謝り続ける。
兵舎に戻ってすぐに、リヴァイ兵長は手術室へと運ばれた。
その間、私は、ハンジさんに促されて自室で私服に着替えた後、エルヴィン団長の執務室兼自室に行き、廃工場で何があったのかを報告した。
あの悲劇の追体験をするように説明することで、私は改めて気づく。
身体中を包帯で巻かれ、傷だらけで雨に打たれたせいで高熱も出ているリヴァイ兵長の痛々しい姿が、本当は私がなるべきはずだった姿なのだ。
それなのにー。

「リヴァイは明日にならないと目を覚まさないよ。
 も、もう部屋に戻って眠った方がいい。」

病室の扉が開き、入ってきたのはハンジさんだった。
私は振り向かず、ただ力なく首を横に振る。
小さなため息が後ろから聞こえた後、ハンジさんが隣に椅子を持ってきて座った。

「謝ってる声が聞こえたけど、は何も悪くないよ。」
「本当は私がこうなるべきだったのに…。」
「それは違うよ、。
 こんな姿になってもいい人間なんていない。」

ハンジさんが私の両肩を握って、自分の方を向かせた。
必死に私を見る二つの瞳が、私にはキツかった。

「じゃあ…っ、どうして…っ。リヴァイ兵長はこんな…っ。」

最後は言葉にならなかった。
泣くべきではないーと必死に涙を堪えるために、私は自分の手の甲をつねった。
そんなことしたって、リヴァイ兵長が身体中で感じる痛みも、あのモーリという男が怒りを煽るために投げつけた言葉で感じた心の痛みも、代わってあげることは出来ないのにー。

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