【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第85章 ◇第八十四話◇あなたが生きているだけで…【恋の行方編】
「ルル・クレーデルのご両親が持ってきた包丁で
リヴァイ兵長が怪我をしたとき、俺が処置をしたんだ。」
医療兵士は、傷薬を塗りながら言う。
「あのときの傷を見てるから、俺は分かったんだ。」
「何が分かったんですか?」
「リヴァイ兵長は、どうしても、君に向く刃に耐えられなかったんだろうって。
君が傷つくのが許せなかったんだ。傷ひとつもつけたくないくらいに。」
「そんなの…、私だって、リヴァイ兵長が傷つくのは、嫌です…。」
「きっと、それはリヴァイ兵長だって分かってるさ。
それでも、そう想ってくれる優しい君のためだから、
リヴァイ兵長も死ぬ気で戦えるんだと思う。」
医療兵士はそう言うと、傷薬の入れ物の蓋を閉めた。
そして、傷テープを貼ってから、私の手や腕に他に傷がないか確認をし始めた。
「よし、本当に怪我は手首だけだな。
さすが、リヴァイ兵長だ。」
医療兵士が、さっきモブリットさんがしたよりも少し強く、押すように頭を撫でるから、強引に下を向いてしまう。
そうすると、さっき医療兵士が貼ってくれた傷テープに、雫がポタポタと落ちた。
また、私は泣いていたようだ。
グッと拳を握る。
リヴァイ兵長に助けられたのは、もう何度目だろう。
その度に私は泣いて、泣いて、泣くばかりでー。
「大丈夫だ。リヴァイ兵長は今まで、巨人の大群を前にしたって生きてきたんだ。
俺達を残して、死んだりしないよ。それに、俺は、傷だらけの自分達を頼むと
リヴァイ兵長から直接言われてるんだ。絶対に死なせたりしない。」
力強く言った医療兵士は、爪が食い込むほど強く、拳を握っていた。