【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第83章 ◇第八十二話◇魔法の呪文を唱えて【恋の行方編】
その下品な笑い声で、あのでっぷりとしたお腹の中年男も私が起きたことに気づいたようだった。
「おい、そりゃ、俺の人質だ。乱暴に扱うな。」
「へいへい。そーでした。モーリ様の仰る通りに。」
中年男に窘められ、金髪の男は途端につまらなそうな顔をすると、突き放すように掴んでいた私の前髪を放した。
そこへ、モーリと呼ばれた中年の男がやってきて、立ったまま私を見下ろした。
「よく見えるように、コイツを起こせ。」
無表情でそう告げたモーリの指示に従って、側近の男達が私の身体に触れようとする。
「触らないでよっ!」
必死に身体を動かして抵抗しようとしたが、後ろ手に縛られているせいで、結局何も出来ないまま起こされた身体は、後ろの壁にもたれかかるように座らされた。
すると、モーリが、足を曲げて屈み、私に顔を近づけた。
漸くハッキリと見えたモーリの顔は、浅黒く汚れていて、瞳だけがギョロギョロとして気味が悪かった。
それに、ドブのような臭いがする。
思わず顔をしかめた私の顎を乱暴に掴み、モーリが口を開いた。
「やっとちゃんと顔が見れたぜ。綺麗な女じゃねぇか。
てめぇが、あのクソチビの女だと思うと、腸が煮えくり返るぜ。」
「あなたが爆弾犯なの?」
「爆弾?あー、そういや、何回かドカンとやったかな。」
モーリは、さもどうでもいいことのように言った。
それで、負傷者が、もしかすると犠牲者が出ているかもしれないのにー。
思わず睨みつけた私に、モーリは、そんなことはどうでもいいとばかりに続けた。
「俺はな、アンタの男に、大事な兄貴殺されてんだよ。」
「リヴァイ兵長のことを言ってるなら、意味がわからない。」
「だから、あの男は人殺しだっつってんだよ。
そのせいで、アンタまで誘拐されちまって本当に不憫だよ。」
モーリは、わざとらしく眉尻を下げた。