【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第81章 ◇第八十話◇闇に紛れて消える馬車【恋の行方編】
(あれ…?)
トロスト区へ続く内門へ向かっているとばかり思っていた馬車が、壁から離れて行っていることに気が付いた。
建物の中に人の気配を感じていた街並みからも外れ、工場地帯のような場所へ入っていく。
「道を間違ってますよ。内門に続く道は、あっちです。」
私は、後ろの方を指さして、調査兵達に教えた。
ただ、単純に、道を間違えたのかと思った。
でもー。
「内門には行かねぇから、こっちでいいんだよ。」
「え?」
悪びれもせず、当然のように言い放った金髪の調査兵の隣で、茶髪の調査兵がニヤリと口を歪めた。
そこでようやく、私は違和感を覚える。
いや、もうとっくに、何かがおかしいことには気づいていたはずだ。
それなのに、どうして信じてしまったのかー。
「降ろして。」
立ち上がろうとする私の腕を、隣に座っていた茶髪の調査兵が掴んだ。
腰のあたりに硬いものが当たったことに気が付いて、瞳だけを動かして確認する。
調査兵団のマントの下から覗くのは、拳銃だった。
茶髪の調査兵は、引き金に指をかけている。
いや、彼らが本当に調査兵かどうかすら怪しい。
だって、調査兵団の兵士達は、リヴァイ兵長がどんな男かを知っている。
部下を駒扱いなんて絶対にしないし、むしろ命を懸けて守ろうとしてくれる。
それに、私とリヴァイ兵長が恋人のフリをしてあの場にいたことだって、きっと知っているはずだ。
「撃たれたくなけりゃ、座れ。」
拳銃を腰に押し当てる茶髪の男が、低い声を出す。
馬車の中は、いつの間にか殺気で包まれていた。
「綺麗な身体も、穴が空いちまったら魅力半減だぜ?」
金髪の男が口元をニヤつかせて言うが、瞳は本気だった。
本気で、人を殺すことを躊躇していないー。
仕方なく腰をおろした私を見て、男達は満足気に口元を歪めた。
「あなた達、誰。目的は何。」
「さっきも言っただろ?俺達は、お前の王子様の駒だ。
他の奴らは死んでも構わねぇが、
お前だけは安全な場所に連れて行くように指示されてんだよ。」
「リヴァイ兵長はそんな風に部下を扱ったりしないわ。」
「へぇ~、噂通り、すげぇ惚れてんだな。あんなチビのどこがいいんだか。」
前屈みになった金髪の男は、私の顎を指で摘まむと無理やり顔を上げさせた。