【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第80章 ◇第七十九話◇廻りだす運命の歯車【恋の行方編】
教えてほしいとお願いすると、躊躇いがちに母親はが若い調査兵に言われていた言葉というのを教えてくれた。
「女性の方は、ここに残っている方達のことをとても心配していて
兵舎には戻りたくないようでした。
リ…、なんとかって…、あの、強い兵士さんのことを…。」
「リヴァイかな?」
「あぁ!そうです!そのリヴァイさんって方が先に兵舎に戻って
待ってるって言われて、ようやく馬車に乗って帰って行かれました。
リヴァイ兵長さんの恋人さんですか?」
母親は、目の前にいるのが、そのリヴァイ兵長だということに気づいていないようだった。
兵団についての知識があまりないのかもしれない。
そういう民間人も少なくないので、驚きもしない。
ただー。
母親の話をうまく咀嚼できずにいるジャンとは裏腹に、リヴァイやエルヴィン、ナナバ達は瞬時に理解出来たようだ。
焦った顔を見せられて、ジャンも不安になっていく。
「クソ…ッ。」
リヴァイ兵長は舌打ちをすると、すぐに駆け出した。
「ゲルガー、君はリヴァイと一緒に兵舎に急いで戻って
が帰っていないか確認してくれ。
我々の想像通りなら、数名を兵舎に待機させ、残りは総出での捜索だ。」
「エルヴィン団長は?」
「貴族が被害にあった上、憲兵団も集まっている状況だ。
私はここから離れられない。そっちの指揮はミケに任せよう。」
敬礼で応えたゲルガーは、近くにいた自分の班の班員に至急トロスト区へ戻るようミケへの伝言を頼んだ後、自分も急いで走っていった。
そんな中、ジャンは、焦りと不安に襲われていた。
悪いことが起こっている、それは自分が想像した一番最悪の事態に繋がるものだ。
でも、頭が回らない。
母親の言葉に覚えた違和感も、頭が拒否しているみたいに、何だったか分からない。
傷つくを想像したくない心が、頭の回転をストップさせようとしているようだった。
「エルヴィン団長、本当に兵士がを攫ったのでしょうか?」
ナナバは、どうしても信じられないと言う顔でエルヴィンを見上げた。
「それはまだ分からない。
だが、兵団服を着ていたということは、
どちらにしろ兵士の中に協力者がいるということだ。」
エルヴィン団長の鋭い眼光の先で、王子様が嬉しそうに笑ったのが見えた気がした。