【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第80章 ◇第七十九話◇廻りだす運命の歯車【恋の行方編】
難しい顔で話している数名の精鋭兵達のそばにいるエルヴィン、彼に何かを言っているのはリヴァイだった。
まるで、それが当然であるかのように、その隣にの姿はない。
それが、リヴァイの元へ向かうジャンの足を無意識に早くする。
「がいないってどういうことですか。」
リヴァイの前に立ったジャンは、怒りを含んだ静かな声で責めた。
「君はと親しい新兵だね。この人混みではぐれたんだ。
が心配なのは分かる。とにかく今は探そう。」
リヴァイとの間に入ったのは、見覚えのある精鋭兵だった。
クリスタの所属する班の班長でナナバという名前だったはずだ。
ミケに、が爆弾犯に狙われていると聞かされていた調査兵の1人ー。
不安と焦り、何も出来ない自分への苛立ちで、ジャンは声を荒げた。
「アンタ達は、を囮にして爆弾犯をおびき出そうとしたんだろ!?」
「なぜそれを…!?」
言ってしまってから失言に気づいたらしいナナバはハッと口を噤んだあと、ばつが悪そうに頭を掻いた。
やっぱりー。
さらに怒りを募らせるばかりのジャンに、ナナバは、言い訳にしか聞こえない言葉を続けた。
「このままでは、捜査を任された調査兵団の立場も危うかった。
それに、いつまでも爆弾犯を野放しにしてるわけにもいかなかったんだ。
どうにかして尻尾を掴まないとー。」
「そんな言い訳を聞きたいんじゃないんです!」
説得しようとしてくるナナバの肩を押し、ジャンはリヴァイに詰め寄る。
「アイツは何も知らねぇで…!それでも、リヴァイ兵長を信じてついてきたんじゃないんですか?!
それなら、最後までちゃんと守ってくれよ!なんで1人にしちまうんですか…!?」
怒りに任せたまま声を荒げた。
殴りたいのに殴れないジャンの拳は震えていた。
悔しかったー。
自分なら絶対に手を離さない、守ってやる。たとえば、命にかえたって。
そう、自信を持って言えるのに、それをが望まない。
自分の手を、握ってはもらえないー。
は、伸ばした手を振りほどく男ばかりを求めて、信じて、そして、結局、ひとりで傷つく。
それを自分はいつも見てることしかできなかった。