【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第71章 ◇第七十話◇幸せを握り潰す君の手を愛したから【恋の行方編】
リヴァイ兵長の後に続いて、応接室に入った。
全員の視線が私に集まる。
扉の横にいたペトラなんて、とても驚いた顔で私を見ていた。
「起きたんだね。今日はもう会えないと思っていたから、嬉しいよ。」
ルーカスがソファから立ち上がって、ホッとしたように微笑んだ。
少し前まで、私のものだった優しい微笑みのままで、懐かしい胸の痛みを感じる。
でもー。
「その手は、僕に見せつけるためかな。」
ルーカスは悲しそうに、私とリヴァイ兵長の繋がる手を見下ろす。
私はまた、彼を傷つけようとしている。
今度こそ、故意に、敢えて傷つけようとしている。
思わず、放しそうになった手を、リヴァイ兵長が強く握った。
そうだー、決めたのだから、私はー。
一度目を伏せ、小さく深呼吸をする。
そして、顔を上げてから、私はしっかりとルーカスを見つめた。
「私、ルーカスとは一緒になれない。
それを伝えるためと、この指輪を返すために来ました。」
意を決して、私は、ハッキリと伝えた。
そして、リヴァイ兵長と握っていない方の手をルーカスの前に出す。
そっと開いた掌の中に、大きな宝石のついた指輪を見つけたルーカスの顔が、僅かに歪む。
ズキンー、胸が痛んだ音がした。
でも、これでいい。
あのとき、どうしても調査兵団に入団すると頑なな私に、悲しそうに別れを告げたのは、ルーカスだった。
最後の最後まで、ほんの少しの希望を残しておきたくて、別れを切り出せなかった私の代わりに、ルーカスが告げた。
私はいつだって、ズルかった。
そのせいで、ルーカスにこんなところまで来させてしまった。
だから、ちゃんと終わらせないといけない。
「これは君にあげたものだから、僕はいらないよ。」
私の元へ歩み寄ってきたルーカスは、私の掌を自分の手で包んで握らせた。
それでも、頑なに掌を開こうとすれば、ルーカスは指輪を受け取った。
でも、それを私の胸ポケットに入れてしまう。
驚いた私に、ルーカスが言う。
「今日もあの草原で言ったはずだよ。
僕なら君を幸せに出来る。君の望みならなんだって叶えてあげられる。
だから、君が掴むべき手は、そこじゃない。僕の手だ。」
ルーカスが、私に手を差し出す。
あぁ、きっと、その手を掴んだら私は本当に幸せになれるのだと思う。