【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第10章 ◇第九話◇震える背中の覚悟【調査兵団入団編】
エルヴィンの執務室を出たハンジ達は、兵舎併設の訓練所にやってきていた。
といっても、宿舎のすぐ隣にあるため、は自分の部屋から見えていたそれが訓練所だと気づいていたようだった。
「よかったね。
今週中には内地への移住を進められるように準備すると約束してもらえて。」
「それが叶わなかったら、私は今すぐ家に帰るだけです。」
の覚悟の前で、エルヴィンは折れるしかなかった。
訓練に励む兵士達をじっと見ていたは、不機嫌であることを隠しもしない。
調査兵団に入らなければいけなくなった今の状況に相当腹を立てているらしい。
でも、それも仕方がない。
今までは、家族と一緒の家に住み、友人とお喋りをして、素敵な男性と恋をして、普通の女性としての人生を謳歌していたのに、いきなり現れた調査兵達に無理やり兵士にさせられてしまったのだ。
しかも、壁外で巨人を討伐する調査兵団の兵士だ。
ハンジの思いつきで、彼女の人生は大きく変わってしまった。
責任を感じない、と言ったら嘘になる。
でも、どうしても、彼女には調査兵団に入団してほしかった。
トロスト区に残った巨人の掃討作戦のときに彼女が見せた姿が、今も頭から離れない。
未熟な立体起動装置の操作、意味も分からずにうなじを切り込んでいるとしか思えない動作と細い腕。
彼女の戦闘をなすそのすべてが、巨人を倒せるわけがないと言っているのに、彼女は一体も逃さずに討伐していた。
が、どういう気持ちで戦っていたのかは分からない。
きっと、今そこで死にかけている兵士が死んでいくのを見過ごすことが出来なかったのだろうと思う。
彼女はそれを、自分の弱さだと思っているのかもしれない。
でも、ハンジにはそれは、彼女本来が持つ“優しさ”という強さなのだと感じたのだ。