【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第68章 ◇第六十七話◇シュトレンと恋心【恋の行方編】
灯りもつけていない薄暗い部屋で、ローテ―ブルに肘をつきもたれ掛かって、リヴァイ兵長が買ってくれた菓子を眺め出してから、しばらく経った気がする。
1人前サイズにカットされたシュトレンは、簡易的な透明のビニールで包装されていた。
ドライフルーツが練り込んである生地はとても美味しそうだ。
そうは思うのだけれど、眺めるばかりで食べる気にはならない。
そうしていると、誰かが部屋を訪ねてきたようで、扉をノックする音が静かな部屋に響いた。
「私、ペトラ。入ってもいい?」
「ど~ぞ~。」
ローテーブルにだらしなく寄り掛かったまま、私は気の抜けた返事を返した。
すぐに開いた扉から、ペトラが入ってくる。
「さっき、ハンジさんに会って、明日は104期の座学指導を私達でしてってー。
あれ?そのお菓子、どうしたの?」
ローテーブルの上で、人差し指で適当にお菓子を転がして遊んでいると、ペトラにとられてしまった。
なんとなく下を向いていた私の視線がようやく上がって、ペトラの手の中にあるお菓子を映す。
「今日のお使いのご褒美だって。リヴァイ兵長がくれた。」
「食べないの?」
「…分かんない。」
「食べないなら、私が食べていい?」
「…食べる。ちょうだい。」
「はいはい。」
苦笑いを浮かべながら、ペトラは私の手の中にお菓子を戻した。
やっぱり、とても愛おしくて、憎らしい。
なんとなく、ペトラにあげてもいいかな、なんて思いながら、私は透明なビニールを剥がした。
途端に甘い匂いが鼻を刺激して、お腹が空いてきた。
ひとりで全部食べたい。誰にも、あげたくない。