【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
「それは、ミケ分隊長が持っていてあげてください。」
布袋を締めて、ミケ分隊長の手の中に包んだ。
ルルはきっと、この絆創膏はミケ分隊長に持っていてほしいはずだ。
ほんの少しだって長く、彼のそのジャケットの内ポケットの中にいたいはずだ。
「俺はあまり絆創膏は使わないんだ。」
「それなら、それでもいいですよ。
それは、ルルがミケ分隊長にあげたものだから。」
ミケ分隊長の手が躊躇いがちに布袋を握りしめた。
そしてー。
「そうだな。」
自分の手の中に包まれた布袋を見つめながら、ミケ分隊長が小さく呟く。
もしかして、それは私が持っていた方がミケ分隊長の為になったのだろうかー。
ふと、そんなことを思った。
でも、きっと、これでいい。
私がルルに出来ることなんて、もうこれくらいしかないからー。
「世界は、残酷だねって、」
「ん?」
不意に私が口を開くから、ミケ分隊長は伏せていた顔を上げた。
でも、今度は私が、絆創膏を握りしめているミケ分隊長の手を見ていた。
「世界は残酷だって、ルルが言ったんです。
私も、そう思います。
あんなに…、優しくて、強くて、綺麗で、素敵な女性を奪ったんだから…。」
「…あぁ、そうだな。」
「でも、世界は美しいと信じたいとも言ってました。」
「そう、か。」
ミケ分隊長の表情が少し柔らかくなった。
残酷だ、と言うルルよりも、美しいと言うルルの方が、彼女らしいと思ったのだろう。
私もそう思う。