【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
『誰かを想う優しい気持ちは、絶対にその誰かの助けになるはず。
そしてそれはいつかきっとを守ってくれるから。』
ルルの手紙に遺されていた優しい声を思い出す。
彼女は、どんな風にミケ分隊長のことを想っていたのだろう。
どんなに優しい気持ちで想い続けていたのだろう。
その想いは、巡り巡ってルルの何を守っていたのか、今となってはもう分からない。
でも、確かにルルは守られていたのだろう。
ミケ分隊長が、ルルを強くしたのかー。
「ルルに、美しい世界を見せてくれたのはきっと、ミケ分隊長だと思います。」
「そんなことはー。」
「世界は…、美しい…っ。本当に…っ、美しいん、ですよね…っ。」
堪えられず、涙が溢れていく。
本当に美しい世界なら、どうして、美しい心を持ったルルを奪い去ったのだろう。
どうして、ルルはいないのだろうー。
彼女はきっと、自分のせいで誰かが悲しむことを願っていない。
気持ちを胸の中にしまい続けてでも、守ろうとした大切な人の心でさえ、悲しませたくなくて、ただー。
「世界が美しいかは分からない。」
ミケ分隊長がゆっくりと喋り出した。
「ただ…、彼女と一緒に過ごした時間だけは
とても美しい世界を生きていた。それだけは、知っている。」
思わず顔を上げた私に見えたのは、布袋を愛おしそうに見つめるミケ分隊長の横顔だった。
それは、胸が締め付けられそうになるほどに優しくて、悲しくて、とても、美しい光景に見えた。
(あぁ…、ルル…っ。)
やっぱり、私は涙が止まらない。
どうして、ここにルルがいないのかと嘆くことしかできない。
今、ミケ分隊長の優しい顔を見てもいいのは、声を聞いてもいいのは、私じゃない。
私じゃないはずなのにー。
「そう…、彼女に伝えるべきだったんだろうな。」
ミケ分隊長は悲しい笑みを浮かべた。
優しい気持ちが、優しい気持ちを守ろうとしていたのか。
なんて、切ないんだろう。なんて、美しいんだろう。
切なくて、なんて悲劇的で、そして、美しい、ルルとミケ分隊長だけが語れるこの世界にたったひとつの恋物語ー。
胸をきゅっと絞ったような痛みに、やるせない悲しみが溢れ出す。
私は、ルルにも、ミケ分隊長にも、何も言ってあげられない。