【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
でも、隠せていない彼の腕には大小問わず、新しいのからもう古いと思われるものまで、たくさんの傷がある。
本人が、久しぶりにーと言った通り、本来はあまり絆創膏を貼ったりするようなタイプではないのかもしれない。
『そんなにたくさんの絆創膏、どこに持って行くの?』
『何度言ってもボーッとして変な傷作っちゃう人がいて、
絆創膏がいくつあっても足りないから、本人にも持ってて貰おうと思って。』
『あー、好きな人ね?』
『ち、ちが…!そういうんじゃなくて…!
ただ、いつもお世話になってるから、これをあげるくらいしてもいいかなってっ!』
『そっか。じゃあ、そういうことにしとく。』
『本当だから!本当だからねっ!』
『はーい、いってらっしゃーい。』
『もう…っ。』
優しいルルだから、本当にその人のために絆創膏を持って行ってあげようと思ったのだろう。
もしかしたら、恋する乙女の、好きな人に会う口実が欲しいというのもあったのかもしれない。
怒ったように頬を染めて部屋を出て行ったルルの、好きな人に会いに行く前のワクワクしている背中を、私は今でも思い出せる。
「もしかして、ルルの訓練に付き合ってくれてた上官って
ミケ分隊長のことですか?」
「あぁ。誰にも気づかれないように隠れて努力している彼女は、本当に強い女性だった。
厳しく指導していたのに、弱音を吐かれたことは一度もない。」
その日のことを思い出したのか、自分の左手の下に隠れた絆創膏を眺めるみたいに目を伏せた。
その横顔がひどく優しくてー。
私は続けようとしていた言葉を飲み込んでしまった。
「あぁ…、この絆創膏も彼女がくれたんだ。
俺が擦り傷ばかり作ってるのに呆れて、大量に持ってきてくれた絆創膏も
残りはもうこれだけしかないが…。君にあげよう。」
ミケ分隊長はジャケットの内ポケットから小さな布袋を取り出した。
広げてくれた布袋の中に、絆創膏が幾つか入っているのが見えた。
不意にルルの甘く優しい香りがした気がした。