【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
被験体襲撃事件から数日が経っても、犯人は分からないままだった。
そもそも巨人の実験に対して懐疑的な憲兵団は、本気で犯人を見つけようという気はないのだと思う。
とりあえず、かたちだけ捜査していることを示すために、立体起動装置のガス圧なんかを調べたりをしていたけれど、それからは何の音沙汰もない。
「あ…、また寝てた…。」
ノートに頬を押し当てて見える横向きの図書室の風景が、私の視界にぼんやりと広がる。
勉強をしていると、どうしても眠たくなってしまう。
夕飯の後、夜に勉強をしているのだし、眠たくなるのは人間として自然なのかもしれないけれど、基本的に、勉強というのが嫌いなのだ。
凄く馬鹿というわけではないとは思うのだけれど、子供のころからどちらかというと努力よりも器用にうまくやり過ごしてくるタイプだった。
こんな風に何かを必死に頑張る、というのは調査兵団に入ってからが初めてだった。
まぁ、命がかかっているのだから、頑張らないわけにはいかないというのもあるのだろうがー。
「んーっ。」
テーブルに突っ伏して眠っていたせいで丸くなった背骨を伸ばすように、私は身体を起こしながら両手を左右に思いっきり広げた。
すると、ハラリー、と肩から何かが落ちた。
「あ。」
椅子の下に落ちたのは、ブランケットだった。
また、だ。
拾い上げた私は、ブランケットを膝にかける。
図書室で勉強を始めてもう何日も経つが、いつの間にか眠っていた私の肩にブランケットがかかっていることがよくあった。
談話室で眠ってしまったときに、ブランケットをかけられていたことがあった。
あの日以来、何度かそんなことが続いている。
あれがミケ分隊長なら、このブランケットも彼なのだろうか。
「起きたか。」
やってきたのはミケ分隊長だった。
私が寝ていたことも知っていたみたいだし、やっぱりミケ分隊長がブランケットをかけてくれていたようだ。
「はい、今起きました。
このブランケット、いつもかけてくれてるのはミケ分隊長ですか?」
膝元に置いたブランケットを持ち上げて、ミケ分隊長に見せた。
「あ~…、そうだ。座学の知識は巨人討伐にも役立つ。
毎晩、とても感心している。」
「ありがとうございます。」
私は頬をかいた。
ミケ分隊長に褒められるなんて珍しくて、照れ臭い。