【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
「それで、早速本題なのだが。」
そう言ったミケ分隊長は、テーブルを挟んだ席に腰をおろした。
「次回の壁外任務の延期が決まった。」
「そう、ですか。
それはやっぱり、被験体が殺されたからですか?」
「それもあるが…。」
「何ですか?教えてください。」
言い淀むミケ分隊長に、私は詰め寄るように訊ねた。
自分のせいで壁外任務が延期になったのではないかーそんな焦りに襲われる。
必死に訊ねる私に根負けしたのか、しばらくのにらみ合いの後、ミケ分隊長が静かに口を開いた。
「次回の壁外調査を反対する貴族が現れた。」
「貴族が壁外調査の反対ですか?どうして?」
「あー…それは、俺も分からん。」
ミケ分隊長は、私から目を反らして鼻をかく。
こんなに嘘が下手くそな人、私は初めて見た。
でも、ようやく口を開いたミケ分隊長が、そこは嘘を吐くということは、下っ端の私には言えない事情でもあるのだろう。
仕方がないー。
とにかく、壁外調査の反対がどうして壁外任務の延期という話に繋がるのかが分からない。
壁外調査はどうしても多額の資金がかかるせいで、王政の許可だけではなく、貴族ら有権者の発言力は大きい。
だが、比較的資金もかからない壁外任務は、それなりに調査兵団が力を持って遂行することが出来るはずだ。
「その気分屋か何か分からない貴族が壁外調査を反対したのは分かりました。
その貴族は、調査兵団が独断で実行可能な壁外任務にまで口を出したってことですか?
そんな権利のある有力な貴族ということですか?」
「まぁ、有力な貴族であることは確かだが、壁外任務にまでは口を出していない。
今のところは、だが。」
「それなら、なぜですか?」
「壁外調査を実行できないのであれば、今計画している壁外任務も実行する意味がないー。
そう、エルヴィンが判断した。」
「…そう、ですか。分かりました。」
「物分かりがよくて助かる。」
ミケ分隊長はホッと息を吐いた。