【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第65章 ◇第六十四話◇なんて悲劇的で美しい恋物語を君は【恋の行方編】
私が談話室に入ると、賑わっていた調査兵達が一瞬で静かになった。
そして、次第にザワザワしだす声は、まるで怒鳴り声みたいに私の耳に届いた。
『お前がやったんだろ!』
『お前のせいで俺達の努力が無駄にされたっ!』
そんな声が聞こえてきた気がして、逃げるように背を向けようとした私の肩をジャンの手が止めた。
「大丈夫っすよ。何か言われても、俺が守りますから。」
談話室を見据えながら、ジャンが言う。
自分のせいだと責めながら会議室を出た私を追いかけてきてくれたのもジャンだった。
事件のあった時間に一緒にいたからこそ、ジャンは誰よりも私の無実を知ってくれている。
だからなのだろう、と思う。
でも、犯人が私ではないにしろ、もしかしたらきっかけは私かもしれないのだと思うと、自分を責めずにはいられなかった。
「さんっ!心配してたんです!!大丈夫でしたか?」
私を見つけて不安そうに駆け寄ってきたのは、クリスタだった。
クリスタといつも一緒にいるユミルだけではなく、サシャやコニーもやってきて、会議では嫌なことはなかったかととても心配してくれた。
私のことをほんの欠片も疑うことを知らずに、ただまっすぐに信じてくれていた彼女達は優しい言葉をかけてくれる。
それに、マレーネ達だってそうだった。
私が呆然と被験体の死んだ跡を眺めているとき、彼女達は必死に私を庇ってくれていたのだとハンジさんが教えてくれた。
(あぁ…、私には信じてくれる仲間がいる。)
改めてこの談話室の雰囲気を見てみると、そこにあるのは、私への敵意ばかりじゃないことがわかった。
むしろ、心配そうにしている目が多いじゃないか。
その中には、私を訝し気に見ている調査兵もいる。少なからず、私への疑惑は残っているのだろう。
でも、信じてくれる人たちだってたくさんいる。
それだけで、自分を責める心さえも解けていくようなー。
「ありがとう、私は大丈夫よ。」
私が微笑めば、クリスタ達はホッとしたように胸を撫でおろした。