【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第9章 ◇第八話◇地獄の門へようこそ【調査兵団入団編】
トロスト区の兵団拠点である調査兵団の兵舎は、兵士達の生活する小さな町だった。
家まで迎えに来てくれたハンジさんに連れられて正門をくぐれば、非番の兵士や任務に備えて仕事をしているらしい兵士に訝し気な視線を向けられた。
「ごめんなぁ。今は次の任務とか、ほら…、エレン・イェーガーのことで
みんなピリピリしちゃっててさ。」
「…いえ、平気です。」
調査兵達の歓迎ムードとは思えない視線をやり過ごし、ハンジさんに連れてこられたのは、宿舎だった。
5階建ての大きな建物で、ここで調査兵達が寝起きを共にしている。
私の部屋はその1階の一番端にあった。
最上階にある幹部やベテラン達の部屋は個室になっているが、下っ端の兵士達は2人から6人の大部屋が与えられる。
だが、今は調査兵の数が少ないこともあって、下っ端でも大部屋を個室のように使用していたりするそうだ。
私に用意された部屋も本来は2人部屋のようで、窓際に二段ベッドが置かれている。
ここを1人で使用していいらしい。
「それにしても、本当に荷物はこれだけでよかったのかい?」
ハンジさんが手に持ったバッグを少し上にあげて見せた。
家からこの部屋まで、ハンジさんが持ってきてくれた私のバッグ。大きさは洋服と下着が数着と財布、化粧品がいくつか入る程度で、どう見ても引っ越しで使用するようなバッグではない。
女性の引っ越しは荷物が多いから気合を入れてきた、というハンジさんは、バッグどころか荷物を入れた箱がいくつもあると思っていたらしい。
「いいんです。あんまり大きいものだと母に気づかれてしまいますから。」
「え?ご両親に伝えてないの?」
驚くハンジさんからバッグを受け取り、洋服を取り出す。
タンスの引き出しを開き、洋服を入れながら口を開いた。
「何て言うんですか?お母さんとお父さん達が内地に移住するために娘は死んできますって?」
「…ごめん。」
「…いいえ、決めたのは私ですから。すみません、忘れてください。」
いつの間にか握りしめていた洋服に出来ていた皴を伸ばしながら、私のこのひねくれた性格もまっすぐに伸ばせないかと願った。