【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第61章 ◇第六十話◇星のない夜【恋の行方編】
大きなジャンの背中がびしょ濡れで、こんな土砂降りの日まで見回りなんて兵士というのは本当に大変だと感心する。
だから、せめてもの労わり心だ。
立ち上がった私は、ジャンの肩に乗っているタオルを手に取ると、シャワー後みたいに雨を滴らせてる髪に触れた。
「わぁっ!何っ!?」
「動かないで~、上手に拭けないからね~。」
「いいっすよっ!自分で出来るからっ!」
「いいの、いいの。土砂降りの中の見回りは疲れたでしょ。
ここはお姉さんに甘えておきなさい。」
ジャンが暴れて抵抗するから、私は顔を覗き込む。
私と目が合った後、ジャンがようやくおとなしくなったので、私はまた濡れた髪をタオルで拭き始めた。
そうしていると、ユミルが不思議そうにジャンの顔を覗き込んだ。そして、何かに気づいたような驚いた顔をした後に、面白いオモチャでも見つけた子供のように目を輝かせた。
「おい、お馬さん、顔が赤いけど、どうしたんだ?」
ニヤニヤと意地悪くユミルが言うと、すぐにサシャとコニーが参戦してきた。
「うおーーっ!赤い絵の具塗ったみたいな顔になってんぞっ!」
「あらあら、ジャン坊、どうしちゃったんですかぁ?
ママを思い出してしまったんですかねぇ。」
嬉しそうにからかうコニーと、本当に悪い顔をしてニヤけるサシャにジャンは必死に言い返している。
窓を叩く雨の音の方がうるさかった談話室が、一気に笑い声で騒がしくなった。
やっぱり、私にとっての同期だと呼べる彼らとの時間はとても楽しい。
彼らは、お姉さんと慕ってくれるけれど、私は弟とも妹とも違う彼らのことを、いろんな面で頼りにしている。
「ったく、うるせーなっ!お前らっ!散れ散れっ!」
いつまでもしつこくからかい続けるユミル達をジャンが手で払おうとする。
だが、コニーとサシャだけならまだしも、ユミルがいれば、返り討ちに合うことになる。
「私達には散ってほしいのに、
お姉ちゃんに髪を拭いてもらうのは別にいいのか?」
「俺は見回りで疲れたんだっ!少しくらい労わってもらってもいいはずだっ!!」
「へぇ、本当にそれだけか?甘えん坊のジャン坊さん。」
意地悪く言うユミルに「うるせーっ!」とジャンは怒るけれど、髪を拭くことはダメと言わないところが可笑しくて、私も笑ってしまった。
意外と甘えん坊なのだろうか。