【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第61章 ◇第六十話◇星のない夜【恋の行方編】
夜になっても降りやまない雨は、相変わらず土砂降りのままで、談話室の大きな窓を叩き割ろうとしているようだった。
でも、私はそんなこと気にもしないで、ミカサの手元をワクワクした顔で見ていた。
アルミンとエレンも興味深々で観察している。
器用な手の動きが芸術的だ。尊敬する。
「もう最悪だ、なんでこんな日に俺が見回りなんだよっ、たく。
傘さしても濡れるってどういうことだよっ!
ベルトルトが風邪とかなんだよそれ、身体が弱すぎだっつーのっ。」
「仕方ないよ。ベルトルトも昨日までずっと雨の中、見回りしてたんだし。
助け合わなくちゃ。明日は私達が頑張るからさ。」
「さすが、私のクリスタっ!優しい子だなぁ~。
そこの馬とは月とすっぽんだっ!」
「馬なのか、月なのか、すっぽんなのか、どれかにしろよな~。」
「私はパァァンがいいと思います!」
何やら文句を言いながら談話室に入ってきたジャンの声に気づいて顔を上げて驚いた。
ジャンの髪と肩、そして、足元がびしょ濡れになっている。
一応、肩にかけたタオルで頭を拭いてはいるけれど、頭から滴る水に嘲笑われているようだった。
見回りはジャンだけだったらしく、そこで会って合流しただけというクリスタ達は全く濡れていなかった。
土砂降りの中の見回りは最悪だ、でも俺は頑張ったーというのを、たぶん、エレンに威張って言い出したジャンは、ミカサの手元に気づいて覗き込みながら訊ねた。
「何やってんだ、ミカサ?それ、お前のか?」
「違う。さんに頼まれて、仕方なく縫ってるだけ。
縫い物が出来ないとか言うから。」
「さんの?じゃあ、その紋章って…。」
ジャンは、私の兵団マントの右端に縫い付けられていく自由の翼の紋章を見て言い淀んだ。
なぜか申し訳なさそうにこちらを向いたびしょ濡れのジャンが可笑しくて、私はクスリと笑う。
「おいで、ジャン。ここ座って。」
私は近くの椅子を背もたれをこちらに向けて自分の前に持ってくると、そこに座るようにジャンを促した。
ジャンは不思議そうにしながらも言われた通りに背中をこちらに向けて腰をおろす。