【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第60章 ◇第五十九話◇雨の日の兵士の憂鬱【恋の行方編】
私は一度だけ目を伏せて、目を閉じた。
そして、次に目を開けたときには、ちゃんと兵士の顔に戻っていたはずだ。
「大丈夫ですよ。先輩達の足を引っ張らないように頑張ります。」
精一杯、笑顔を作って見せた。
一瞬だけ、ハンジさんが凄く傷ついた顔をした気がしたけれど、見間違いだったのだろうか。
いつもの嬉しそうな笑顔になったハンジさんが、私の肩をバシバシ叩く。
「俺も行く。」
突然、リヴァイ兵長が口を開いた。
全員の視線を集めたリヴァイ兵長は、酷く不機嫌そうに書類を睨みつけていた。
「何度も言っただろう。
リヴァイにはエレンの巨人化実験をハンジ達と進めてもらう必要がある。
それに、エレンの監視役は終わってないぞ。」
エルヴィン団長がため息交じりに言う。
どうやら、この会議が始まる前にも同じようなやり取りを何度も交わしていたようだ。
「ハンジも今言ったじゃねぇか。
危険な任務だ。俺が行くのが妥当だ。」
リヴァイ兵長は書類から顔を上げて、隣に座るエルヴィン団長に言い返す。
だが、それに答えたのは、反対隣に座るミケ分隊長だった。
「それは違うぞ、リヴァイ。だからこそ、お前はここに残る必要がある。
次回の壁外調査、そしてこれからもお前の力が必要だ。
壁外任務は俺がついていく。俺の分隊の隊員達は優秀な兵士ばかりだ。心配いらない。」
今度は、リヴァイ兵長はミケ分隊長を睨みつけた。
どうしても壁外任務に行きたいのは分かったけれど、リヴァイ兵長がエルヴィン団長の決定に逆らうのを見たことがなかったからとても驚いた。
それに私も、ミケ分隊長の言う通りだと思う。
「あぁ、そうか。
じゃあ、お前はその自慢の優秀な兵士の命は未来には必要ねぇって言うんだな。」
ギロリと睨みつけるリヴァイ兵長に、ミケ分隊長は呆れたように首を横に振った。
どうしてしまったのだろう。
今のリヴァイ兵長は、駄々をこねる子供のようだ。
そんなこと、ミケ分隊長が思っているわけがないのに。
エルヴィン団長だってそうだ。
別に、リヴァイ兵長と比べて、他の兵士達の命を軽く見ているわけではない。
ただ人類のために最善の策を考えているだけだ。