【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第60章 ◇第五十九話◇雨の日の兵士の憂鬱【恋の行方編】
「今回の壁外任務には精鋭兵のみが参加する。
帰還率も通常よりもだいぶ多くなるはずだ。」
エルヴィン団長がそう言うと、リヴァイ兵長は挑戦的な目を向けて口を開いた。
「へぇ、随分希望的観測じゃねぇか。
お前はどれだけ帰ってこられると思ってる。」
「8割、目標は9割だ。」
「じゃあ、ここに名前のある兵士の最低1割は
次回の壁外調査に参加して死ぬ思いはしなくてよくなるってことか。
そりゃ、大層ご立派なことだな。」
リヴァイ兵長がエルヴィン団長に放った嫌味は、きっと、投げつけられた本人よりも、私の胸に重く刺さった。
精鋭兵のみで挑んでも、最低1割の犠牲は覚悟しなければならないのか。
その中で誰が一番最初に犠牲になる確率が高いのか、なんてことは誰の目から見ても明白で、私は巨人に喰われる自分の姿を想像してしまったったことをひどく後悔した。
「リヴァイ…、いい加減にしてくれ。」
エルヴィン団長が眉間を指で押さえてため息を吐いた。
不機嫌にリヴァイ兵長が打った舌打ちが、シンと静まり返る会議室に響いた。
「あーっと…、そうだっ!やっぱり、、壁外任務行くのやめる?!」
突然、ハンジさんが私に話を振った。
私の両肩を持って自分の方を向かせたハンジさんの引きつった笑顔が、何か答えを求めてくるけれど、私はこちらに集まった視線が痛くて返事が出来ない。
だって、リヴァイ兵長まで怖い顔でこっちを見てるー。
ハンジさんなりにピリピリした空気をどうにかしようと必死なのかもしれないけれど、私に丸投げしないでほしい。
「…行きます。」
「なんでだよッ!?」
何と答えればいいのか考えた結果、なんとか出した私の答えをハンジさんは絶望的な顔で嘆いた。
だって、さっき、ここは踏ん張ってくれーと言ったのはあなたじゃないか。
「えっと…、私…行かない方が、いいんですか…?」
もしかして、こっちが正解だったのだろうかー。
両肩をハンジさんに掴まれたまま、私は瞳だけを左右に動かして他の兵士達の顔色を伺う。
でも、全員なぜか苦笑いをしていて答えは教えてくれなかった。
「いや、の答えは正しい。
さすが、調査兵団の兵士だ。君の勇気に感謝する。」
沈黙を破ったのは、エルヴィン団長だった。
答えの正解をもらえてホッとしたのも束の間、リヴァイ兵長が机を思いっきり蹴った。