【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第7章 ◇第六話◇悪魔の囁き【調査兵団入団編】
ハンジさんは、私の戦い方を見て調査兵団の兵士としてやっていけるなんて思ってしまったみたいだけれど、そんなの大間違いだ。
あの日の私と巨人に立ち向かい死にかけていた兵士達とでは、全く違う。
確かに私は、彼らを助けることは出来たかもしれない。
でも、彼らが命を賭してもやろうとしているように人類を救うことなんて、出来ないのだ。
私は、弱い。彼らの足元にも及ばないほどに、弱い。
「お願いです。もう二度と、私の前に現れないでください。」
それだけ告げて、今度こそ私は立ち上がった。
でも、悪魔達は、逃げる私を、許してはくれなかった。
「我々なら、君のご家族を内地に移住させることが出来る。」
「え?」
エルヴィン団長は今、何と言ったか。
驚いて振り返る私に、エルヴィン団長が続ける。
「もし、そう言ったら、調査兵団への入団を検討してくれるかな?」
「…どういうことですか?」
「そのままの意味だよ。我々なら、君のご両親を内地に移住させてあげられる。
婚約者の貴族の彼とは違ってね。」
悪魔の囁きとは、きっとこのことを言うんだろう。
今度は、ハンジさんが私から目を反らした。
きっと、とても良い人で、私を脅していることに心を痛めているんだろう。
でも、今の私には、ここにいる彼らすべてが、悪魔に見えて仕方がなかった。
そして、そんな彼らが、私の家族にとっての救いの神になるかもしれない唯一の存在であることも、嫌というほどに。