【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第58章 ◇第五十七話◇不穏のはじまり(下)【恋の行方編】
「ねぇ、君。」
突然、後ろから声をかけられてクローテは情けないほどにビクッと肩を揺らして怯えた。
ゆっくりと振り返れば、見覚えのある貴族の男がいた。
この男も、さっきのナナバのように女のような線をしていて、昔からいけ好かない。
名前は聞いたことはあるが、覚えたくないから忘れた。
でも、貴族の女達のほとんどがこの優男を追いかけていて、本当に嫌いだ。むしろ憎い。
身長はあるようだが、男なんだから、自分のように横に大きい方がいいに決まっている。太い方がいいに決まっているのだ。
それに、貴族としての階級が自分より高いところも気に入らないことの理由のひとつにある。
「…なんだよ。」
「彼女とは知り合いなの?」
優男がそう言って視線で追いかけているのは、ナナバに肩を抱かれているだ。
そういうことか。
このパーティーでを見て欲しくなったのだろう。
コイツも自分と同じじゃないか。
「あの女のこと知りたいかー。」
意地悪く口元を歪めたクローテは、さっきの悪魔の囁きを優男にも聞かせてやった。
悪魔の囁きに、優男が眉を顰めるから、なんとなく勝った気になる。
優越感に浸るクローテに、優男が言う。
「…それは、本人が言ったのかい?」
「誰でもいいじゃねーか。うるせぇなっ。」
苛立った口調で言えば、ようやく優男は口を閉ざした。
そして、が消えていった方をまっすぐに見つめだす。
女みたいに未練がましい男だなー。
貴族の女が引く手あまたなくせに、他の女を見ている優男が無性にムカついて、ギロリとひと睨みした後、クローテは立ち上がった。