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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第57章 ◇第五十六話◇不穏のはじまり(上)【恋の行方編】


「おい。」

あの日以来、初めて、リヴァイ兵長は私に声をかけてきた。
とても、怖い顔で。
ビクリと肩を揺らして、私は伏せていた顔を上げてリヴァイ兵長を見た。
あれからそんなに経っているわけではないはずなのに、凄く懐かしい気がした。
怖い顔で睨まれているのに、やっとリヴァイ兵長が私と目を合わせてくれたことにドキドキする胸が、愚かで、可哀そうで、ひどく苦しい。

「脱げ。」
「え?」
「今すぐ脱いで、それをハンジに渡せ。」
「え、でも…。」
「それとも、豚野郎に好きにされてぇか。
 それなら勝手にすればいいが、アイツは手癖が悪いと評判でー。」
「ちょっと待ってよ、リヴァイ。
 私は豚野郎に好きにされていいってこと?」
「ドレスに窒息死させられた死体マニアならそうなるだろうな。」
「おいおい、おいおいっ!じゃあ、私も可哀想じゃないかっ!」
「心配するな、死体なら何も感じない。」
「あぁ、それもそうかっ!」

ポンッと自分の手のひらを拳で叩いた後、ハンジさんは猛烈にリヴァイ兵長にツッコむ。
久しぶりに見た軽快なやり取りも、今の私にはただ悲しいだけだった。

「私もシャイセの噂なら知っている。
 ちゃんと手は打ってあるから問題ない。」
「手?」

リヴァイ兵長の片眉がピクリと上がる。

「そろそろやってくるはずだ。」

エルヴィン団長のその声が聞こえていたみたいに、またノックもなしに扉が開いた。
一応、ここは調査兵団の団長の執務室兼自室なのに、それでもいいのだろうかと心配になるくらい、誰もノックしていない。
みんな、調査兵団にとって大切な貴族を待たせないように必死になのだろう。
だってー。

「勝手に着替えさせて、どういうことか私にも説明しろっ!ミケっ!ゲルガーっ!!」

ミケ分隊長に両脇を抱えられたナナバさんは、いつもの兵団服ではなくてなぜかタキシード姿になっていて、手足を暴れさせながら怒っていた。
蹴りが一番酷いのか、逃げ出さないためなのか、ゲルガーさんがナナバさんの両足を自分の両腕で必死に拘束していた。

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