【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第57章 ◇第五十六話◇不穏のはじまり(上)【恋の行方編】
「おい、ミケ。なんだそりゃ。」
リヴァイ兵長はミケ分隊長に訊ねたけれど、答えたのはエルヴィン団長だった。
「のエスコート役をナナバにお願いすることにした。
私は挨拶まわりや仕事で、ずっとのそばにはいてやれないからな。」
エルヴィン団長はそう言うと、ミケ分隊長から解放されたナナバさんに、ことの経緯を説明し始めた。
さっき、私がモブリットさんに聞いたのとほとんど同じだったけれど、違うのは、女性関連で悪い噂の多いシャイセ伯爵から私を守るようにという指令が加わったことだ。
事情を把握したナナバさんは、私とは違ってもう暴れることも、嫌だと我儘を言うこともしないで、敬礼で応えていた。
これも、任務ということなのだろう。
ナナバさんも、私もー。
「こんなに綺麗なお姫様のエスコートなら、喜んで受けるよ。」
私の元へやってきたナナバさんは、腰を少し屈めると、私の顎に手を添えて顔を上げさせた。
こんなキザな仕草も、ナナバさんならとてもスマートだった。
タキシード姿もとても似合っているから、余計にだ。
でも、気になることがひとつ。
「あの…、ナナバさんって男性だったんですか?」
私が訊ねると、ナナバさんは少しだけ目を見開いた後に、意地悪く片方の口の端を上げた。
「さぁ、どっちだろうね。」
ナナバさんの端正な顔が挑戦的な笑みを浮かべるから、思わずドキリとしてしまった。
「ナナバもエスコート役に不満はないらしい。
それでも、リヴァイは反対するか。」
エルヴィン団長が、リヴァイ兵長に言う。
リヴァイ兵長は、私とナナバさんを交互に見たけれど、苛立った様子のままで納得は出来ていないようだった。
「それとも、君がエスコート役をするか、リヴァイ。
お前はそういうのは好まないから頼まなかったが、
特に今は忙しくもないだろう。お前がしてもー。」
「俺は関係ねぇ。」
エルヴィン団長の代替え案をピシャリと切り捨て、リヴァイ兵長はとうとう背を向けた。
そして、不機嫌な背中をそのままに、部屋を出て行ってしまう。
「ということだ、。よろしく頼む。」
エルヴィン団長が、私の肩に手を乗せた。
「い・や・で・すっ!」
私の宣言は、無視された。