【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第7章 ◇第六話◇悪魔の囁き【調査兵団入団編】
驚いた私の顔を見て、したり顔のハンジさんが、また嫌な笑みを浮かべた。
「ご両親だけここに残すのは心配だよねぇ。
いつまた巨人がここにやってくるか分からないのに。」
「それを…!!それをどうにかするのが、あなた達の仕事でしょう!?
私達が内地に逃げ込まなくても平和な世界にしてよ!!!!」
身勝手な提案のことだけではない。
溢れ出す怒りが、止まらなかった。
巨人が襲ってきたこと、死にかけたこと、あの兵士の勘違いで巨人の討伐をさせられたこと、ヒルラが死んだこと、この世界の壁のこと―、すべてのこと。
ハンジさん達だって、この壁の中に住む人間で、巨人が襲ってくるのもハンジさん達のせいじゃない。
『税金の無駄使いとか言われるけど、調査兵団はこの世界を平和にするために、
誰よりも勇敢に戦っているのよ。見てよ、この自由の翼。素敵でしょ。』
昔、どこからか手に入れてきた調査兵団のマントを持って、ヒルラが私の家にやってきたことがあった。
彼女は、調査兵団の紋章を私に見せて、嬉しそうに話していたっけ。
あぁ、どうして。今、彼女のことを思い出してしまうんだろう。
私をまたあの地獄の世界へと引きずり込もうとしている彼らに、文句のひとつも言えなくなってしまう。
「ごめんな?いつか必ず、みんなが壁の外で自由に生きられる世界にしてみせるから。
だから、泣かないで。」
私の顔を覗き込んだハンジさんは、とても悲しそうで、頬に触れる手は、とても温かかった。
泣いてしまっていたことに気づいて、慌てて涙を拭う。
「と、とにかく…!
私は調査兵団には入りません!あなた方もお忙しいでしょう。
もし私が駐屯兵のことを公にするのを恐れてるのなら、そんなことはしないのでご心配なく!」
馬車の降口に超硬質スチールがないことは確認済みだった。
私が降りようとすれば、またあの刃が私に向くのだろう。
彼らが心臓を捧げると誓ったはずの民間人の私に。
でも、避けて降りる自信ならあった。