【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
そしてー。
「文句言ってくる。」
立ち上がって、部屋を出ていこうとするペトラの手を慌てて掴んだ。
「いいよ!リヴァイ兵長は悪くないんだから!」
「そんなことない。それに、一言、言ってやらないと私の気が済まないの!」
怖い目をしているペトラは、とても怒っていた。
それは、私のためだとわかってる。
でもー。
「もういいの。もう、いいの…。」
「でもねっ、。もし、仮にだよ?本当にお酒の勢いだとしても
女の人をこんな風に置き去りにするなんて、最低だよ。
一発ぶん殴ったってお釣りがくるくらいひどいことしたんだよ。」
私を説得しようとするペトラから逃げるように、リヴァイ兵長に傷つけられた心を隠すように、私は膝を抱えて顔を埋めた。
「もう…、これ以上、傷つきたく、ないの…。
だから、お願い。もう何もしないで、もうこれ以上、私はー。」
「…っ。わかった。」
自分の膝を抱える私を優しい腕で包み込んだペトラは、「ごめんね」と続けた。
ペトラの腕の中で、私は必死に首を横に振る。
ペトラは何も悪くない。
もちろん、ジャンなんて何も関係ないのに巻き込まれた被害者だし、リヴァイ兵長だって悪くない。
悪いのは私だ。
リヴァイ兵長のことなんて好きになるから、気持ちを知ってほしいなんて思ってしまったからー。
私が弱いからー。
強くなろうと思ったはずだったのに。
ペトラに抱きしめられて幾分か安心したらしい私は、身体に残っていたお酒のせいで眠気に襲われた。
私が眠るまでずっと、頭を撫でてくれたペトラの優しい手の温もりを感じながら、その夜はようやく終わった。