【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
次に部屋の扉が開いたのは、リヴァイ兵長が出て行って少し経ってからだった。
扉を叩く音がした後、そっと、ゆっくり開いた扉から聞こえてきたのは、頼りになる優しい友人の声だった。
「ねぇ、リヴァイ兵長来なかった?
あれ、寝たの?布団もかけてないし、もう。」
困ったように言いながらベッドに近づいてきて、ペトラはようやく乱れた格好のままで両手で顔を隠して泣いている私に気付いたようだった。
驚きでハッと息を飲んだ音がした後、慌てた様子で私の身体を起こし、ブランケットで包み込んで抱きしめる。
優しい温もりが私の冷えた身体と心を包むから、私はなぜかもっと悲しくなって震えるように泣いてペトラに抱き着いた。
「何があったの!?あのジャンってやつね!!
それで、リヴァイ兵長が怒って何処かに連れて行ったのねっ。
そんなこといいから、のそばにいてあげればいいのに…っ。」
私をギュっとギュっと抱きしめながら、ペトラが怒ったように言う。
またジャンが勘違いで責められてしまって、私は焦った。
「ちが…っ、違うの、ペトラっ。」
「何が?いいのよ、女を襲うようなクソ野郎、庇ってやらなくたってっ!」
ペトラは怒りで頭に血が昇っているのか、口調がリヴァイ兵長みたいになっている。
「本当に違うのっ!ジャンは悪くないっ。
私が…、私が悪いの…!私が…っ!」
私はペトラに、ジャンにベッドに運んでもらってから、リヴァイ兵長が部屋を出ていくまでに何があったのかを、時々息が苦しくなりながらもなんとか説明した。
私の話を聞いていたペトラの顔は、真っ青になった後、どんどん怒りに満ちていった。
「なんでっ!?なんで、リヴァイ兵長がそんな風に部屋を出て行っちゃうの!?
意味が分かんないよ!!」
さっきまでジャンに向かっていたペトラの怒りは、今度はリヴァイ兵長へと向かったようだった。
でも、それも間違いだ。
怒りを向けられるべきは私であって、諸悪の根源はすべて私がリヴァイ兵長に恋をしてしまったことだ。
「仕方ないよ…。お酒の勢いでどうでもいい女に手を出そうとして
好きとか言われたら、嫌になっちゃうよ。
仕方ない…。悪いのは、わたー。」
「仕方なくない!!だって、リヴァイ兵長は…!!」
怒った顔で怒鳴ったペトラは、そこで言葉を切ると、私を抱きしめる腕を放した。