【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第55章 ◇第五十四話◇魚も溺れる夜【恋の行方編】
「…すまない。」
私から目を反らし、リヴァイ兵長は思いつめた顔で、声を押し出すようにそう言った。
分かっていた。こうなることは、分かっていたのにー。
流れる涙も、乱れた服もそのままの惨めな私の姿も、もう二度と瞳に映したくないみたいに、リヴァイ兵長は私から離れていく。
分かっていた。分かっていたけれど、でも、行かないでー。
そんな風に去っていくくらいなら、いっそ傷つけてー。
汚い女だと、罵ってくれたらいいのにー。
リヴァイ兵長が振り返ることもなく出て行った扉が、静かに閉まる。
ひとりぼっちになった部屋で、私は、誰もぬぐってはくれない涙を流し続けた。
どうして、リヴァイ兵長は、私の身体に触れたのだろう。
女を抱きたかっただけなのに、私の気持ちを知って萎えてしまったのだろう。重たいと思ってしまったのだろう。
それならどうして、それが私だったのだろう。
他の誰でも良かったのなら、どうして私だったのだろう。
どうしてー。
どうして、私にリヴァイ兵長の痕を残していってしまうのー。
忘れられなく、なってしまうのにー。
声を押し殺して、それなのにあとからあとから溢れてくるリヴァイ兵長への想いに溺れそうになりながら、私は泣いた。
失恋が、こんなにもツラいものだったなんて、知らなかった。
知りたく、なかったー。