【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第54章 ◇第五十三話◇気づかれない思惑【恋の行方編】
久しぶりの非番の日、私はトロスト区に買い物に出ていた。
「ごめんね、ベルトルトに荷物持ちさせちゃって。」
「いいですよ。トロスト区の見回りっていっても特にすることないですから。」
「そうだな。それに、女性に重たい荷物を持たせないのも兵士の仕事だ。
偶然、の困ってるところに出くわせてよかったな。」
ライナーはそう言うけれど、その兵士である私が彼らに助けられているとは、申し訳ない気持ちになる。
でも、恐縮する私の隣で、林檎をこれでもかというほど詰め込んだ紙袋を涼しい顔で抱えるベルトルトが、優しく微笑む。
非番の前日、つまり昨日だが、待ちに待った給料日だった。
テュランとの約束を守るために林檎を買いに来た私が、フラフラと重たい紙袋を抱えていたところに、今日はトロスト区の見回り仕事だったらしいベルトルトとライナーが偶然現れたのだ。
そして、荷物持ちをかって出てくれたことで、こうして重たい紙袋がベルトルトの腕の中にあるというわけだ。
あの図書室で本を探してもらって以来、なぜかベルトルトに懐かれている気がする。
自意識過剰か、勘違いかとも思ったけれど、こういう偶然が最近すごく多いのは事実だ。
食事室でも必ずと言っていいほどベルトルトと同じテーブルになるし、訓練をしていたら指導してほしいとやってきたりもする。それだけじゃない。他にもちょっとした生活の一コマに、気づいたらベルトルトがいたりするのだ。
まぁ、必ずそこにはライナーも一緒にいるのだけれど。
(偶然でもいいから、これくらいリヴァイ兵長と会えたら嬉しいんだけどなぁ。)
せっかく手伝ってくれている彼らの隣で恋する人を思い出す私は、彼らと何でもない話をしながら兵舎を目指す。