【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第54章 ◇第五十三話◇気づかれない思惑【恋の行方編】
図書室にやってきた私は、棚に並ぶ本の背表紙と睨めっこしていた。
少し前に私が勉強のために読んだ本のタイトルを探している。
実験のときに、その本の話をハンジさんにしたところ、とても興味を持ったらしい。
今から探しに行くと言っていたが、まだ仕事が残っているということだったし、一度その本を手に取った私の方が探しやすいだろうと思い、代わりに図書室にやってきたのだ。
でも、私が本を返したはずの場所に、目当ての本はなかった。
あんな古い本、誰かがもう借りてしまったのだろうか。
兵士達はあまり本を読む習慣はないようで、書類仕事が増える時期以外はあまり図書室を利用されることもない。
最近は訓練が主な任務になっているから、あの本は絶対にあると思ったのだけれどー。
「何か探してるんですか?」
声をかけてきたのはベルトルトだった。
片手に数冊の本を持っている。彼も本を借りに来たのか、もしくは返しに来たのかもしれない。
「うん、前に読んだ本なんだけど、返したところになくって。」
「何て本ですか?一緒に探しますよ。」
「いいの?」
「僕もこの本を返したら、他に読みたいの探したいと思っていたんです。
だから、それと一緒に探しますよ。」
「ありがとうっ、助かるっ。」
ベルトルトに礼を言って、探している本のタイトルを伝えた。
一緒に本を探しながら、ベルトルトの話を聞くと、時々、こうして図書室に時々来て本を読んでいるそうだ。
この世界の巨人の歴史、巨人の知識を学びたいと語る彼は、とてもまじめで一生懸命で、とても好青年に見えた。
「あれ?それ、前からしてました?」
本を探していたベルトルトの視線が、私の左手首に移った。
赤いブレスレットに気づいたらしい。
「良く気付いたね。男の人って気づかないものだと思ってたよ。」
「そんな派手な色だったら誰だって気づきますよ。」
苦笑するベルトルトに、教えてやりたくなる。
リヴァイ兵長は言うまで気づかなかったのだと、喉まで出かかってなんとか堪えた。
「綺麗なブレスレットですね。さんの明るいイメージにピッタリです。」
ふわりと微笑むベルトルトが、穏やかに微笑むルーカスと重なった。