【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第7章 ◇第六話◇悪魔の囁き【調査兵団入団編】
ストヘス区で、王子様と呼ばれている彼には、お姫様候補なんて腐るほどいる。
巨人が暴れまわったトロスト区の田舎娘と結婚するくらいなら、お姫様候補の誰かと結婚させたいとご両親が思っていても、それは当然のことだと思う。
「でも、僕は、君に結婚の破談を伝えるためにここに来たんじゃないよ。」
「え?」
どういうことかと、うずめていた胸から顔を上げると、優しく微笑むルーカスがいた。
「いくつかの条件を出されたけど、君との結婚の許可を貰えたんだ。」
「どういうこと?」
もともと、ルーカスと私の結婚には、いくつもの条件が出されていた。
そのすべてをのむことでなんとか結婚の許しを貰ったのだ。
今回、その条件に何か新しいものが付け加えられたということだろうか。
「ストヘス区は今、いつか押し寄せてくるかもしれないウォール・ローゼの住民に怯えているんだ。」
「えぇ、知ってるわ。」
誰も敢えて口に出すことはしないが、人類みんなが分かっている。
ウォール・ローゼの内門が破壊され、そこに暮らす人々がウォール・シーナになだれこんだとき、人類は滅びることになるだろう。
巨人に食い荒らされるのが先か、生きる場所や物資を奪い合う人々の戦争が先かは分からない。でも、きっと、そのどちらかで人類が滅びるのは確実だろう。
それだけではない。あの巨人化出来る訓練兵、エレン・イェーガーのことが内地にも伝わり、そのことで大騒ぎになっていると噂好きの友人から聞いている。
巨人化出来る訓練兵がいたトロスト区の住人など、恐ろしくて受け入れたくないと内地の人間なら言うに決まっている。
「だから今、トロスト区に暮らす君と結婚して
ストヘス区へ君達家族を招くことをどうしても許してもらえなかった。」
「…仕方がないわ。」
「でも、必死に説得して、君だけならストヘス区へ移住してもいいと許可が出たんだっ。」
ルーカスが、何とも嬉しそうな顔で言った。