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【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】

第7章 ◇第六話◇悪魔の囁き【調査兵団入団編】


馬車から飛び降りた私を追いかけてきたハンジさんは、家に送り届けるまでずっと巨人の話をしていた。あの人は、調査兵団の兵員というよりも、巨人オタクだ。しかも、異常な。
あれから数日が過ぎたが、調査兵団からの接触はない。
最低な提案だったと思い直してくれたのならいいが、どうしてもそうは思えなかった。
あんなに身勝手な提案をしているのに、ハンジさんの目はイキイキしていたし、調査兵団をまとめ上げるエルヴィン団長がすぐに諦めるような提案を危険を冒してまでしに来るとは思えない。
だって、私が怒り狂って誰かに言えば、調査兵団だけではなく、私を巨人討伐の場に追いやった駐屯兵団もただでは済まないことくらい、エルヴィン団長が一番理解しているはずだ。
嵐の前の静けさ―。
それだとしか思えない。

「#なまえ#?聞いてる?」

ルーカスの声にハッとすれば、自分の顔を覗き込む恋人の心配そうな顔が見えた。
忙しい合間を縫ってわざわざ会いに来てくれた恋人との逢瀬中に、調査兵団のことを考えてしまうなんて、どうかしている。

「ごめんなさい。もう一度、言ってくれる?」
「あぁ、本当にごめんよ。僕も両親に何度も言ったんだけど、どうしてもダメだって言うんだ。」
「ダメ?」
「だから、君との結婚のことだよ。」
「あぁ…、そう…。」

そういえば、会いに来るなり暗い顔をしていたルーカスは、部屋で二人きりになってすぐ、結婚の破談について話をしたんだっけ。

「ショックなのは分かるよ。僕も…だから。」
「でも、仕方がないわね。私達はもともと住む世界が違いすぎるんだもの。」
「そんなこと関係ない!」

プロポーズされる前から諦めていた私を、ルーカスがキツく抱きしめる。
もう何度もこの腕の中で眠りについて、朝を迎えたことがあるのに、いまだに慣れない。
この世界で最も遠いところにいる人に抱きしめられているような、奇妙な感覚になる。
たぶん、ルーカスが手の届かない人だという気持ちがいつまでもなくならないからだと思う。
この腕の中に入ってみたい、とどれくらいの女の子達が夢見たんだろう。いや、きっと今だって、夢見ている女の子はいくらでもいるに違いない。
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