【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第6章 ◇第五話◇悪魔の提案【調査兵団入団編】
確か、彼の名前は、エルヴィン。
調査兵団のファンだったヒルラが、彼のことはよく話してくれた。
何とかという陣形をあみ出した凄い人だと言っていた
そういえば、彼女は、団長のエルヴィンと兵士長のリヴァイの人並外れた素晴らしさというのについてよく語っていた。
今、ここにヒルラがいたら、狂喜乱舞して喜んだかな。
「おい、何笑ってやがる。」
訝し気なリヴァイの顔に、意識が別のところへ行っていたことに気づいた。
エルヴィン団長とハンジさんも不思議そうに自分を見ていて、恥ずかしくなる。
「すみません、何でもないです。
…それで、じゃあ、一体何の話をしに来たんですか?」
「それはハンジに説明してもらう。」
エルヴィン団長に指示を出されたハンジさんは、ワクワクした顔で、あの日、巨人掃討作戦での私の戦い方に興味を持ったことを話してくれた。
そして、聞いていて腸が煮えくり返りそうになるほどの身勝手な提案についても―。
「頭がおかしいんですね、あなた達。」
嫌味しか込めずにそう言って、ハンジさん達を睨みつけた。
あまりにも勝手な話を聞かされて、怒りで血が頭に上ったせいなのか、今はリヴァイの何を考えているか分からない鋭い瞳だって全然怖くない。
…全然は嘘だ、少ししか怖くない。
「あぁ、そうだな。私達は頭がおかしいんだろう。
そして、最低だ。」
エルヴィン団長のそれは、まるで自分に言い聞かせているように見えた。
ハンジさんも、リヴァイ兵士長でさえも、自分達がいかに身勝手なことを言っているのかは理解しているようだった。
「君の力があったおかげで、助かった駐屯兵達が大勢いる。
調査兵団の団長としては、是非、その力を、今度は人類のために使ってほし―。」
「いい加減にしてください!!」
我慢の限界だった。
出来る限りの大声で怒鳴りつけ、制止するハンジさんの手を振り払って走り続ける馬車から飛び降りた。
「え?嘘。ここから飛び降りちゃったけど、彼女。」
「走る馬車から飛び降りて、バランスも崩さず走り去れるのか。」
「へぇ…。面白れぇ。」
馬車の中でこんな会話が繰り広げられていることなんて、知りもしないで、私は家まで走った。
自分のしたこの行動が、ハンジさんの提案にたいしてまだ不安を残していたエルヴィン団長とリヴァイ兵士長の気持ちを固めてしまったことなんて、知りもしないで―。