【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第52章 ◇第五十一話◇アニと不思議な話【恋の行方編】
訓練兵時代の彼らの様子を聞いたり、しばらく他愛もないというよりも、くだらない話を楽しんだ後、アニは不思議な話をし始めた。
「アンタさ、知ってる?」
「何を?」
「私達の世界は、これで終わりじゃないんだ。」
「終わりじゃない?」
「私達はみんな、死んだら最初からやり直してるんだよ。」
「生まれ変わるってこと?」
首を傾げる私に、アニは父親から聞いたという話を聞かせてくれた。
それはとても不思議な話。
私達は生まれたときから運命を背負っている。
それはみんなそれぞれ違うのだけれど、誰もがその運命と共に生まれ、戦い、そして死ぬ。
そうしたら、私達はまた、何もかもを忘れて生まれ直す。何度も、何度も、何度もー。
同じことを繰り返しているのだ、とアニは言った。
そしてー。
「だからさ、今私達が出逢ってる人ってのは、
生まれる前に会ったことがある人なんだ。
だから、アンタと私も知り合いだったかもしれないね。」
「そのときも私達は仲良しだったかな。」
「今だって、仲良しになったつもりはないんだけど。
アンタが勝手にそう呼んでたような気はするよ。」
素っ気なく言うアニがおかしくて、私はクスリと笑う。
「そうなると、私はあのバカ共に
何度もバカなことを見せられてるってことだね。最悪。」
「アハハ、それは良いねっ。」
面白そうに笑う私を呆れた顔で見ていたアニは、静かに、でも、私にちゃんと聞こえるように、言ってくれた。
「死んだ人にはさ、もう二度と会えなくなるわけじゃないんだ。
何度だって、嫌って程にまた会うんだよ。」
アニのまっすぐな瞳が、私を見つめる。
あぁ、私は気づいた。アニが本当に言いたかったこと。
突然、不思議な話をし始めた理由。
勘の鋭いアニは、私に詳しい話を聞かなくても、きっと分かったんだろう。
私の大切な人の命が、もうないこと。
その人に会いたくて、会いたくて、仕方がないこと。
「そっか。そうだといいな。」
すっかり冷めてしまったティーカップを両手で包むと、胸がじんわりと温かくなった。
そして、アニの優しさと親友たちへの恋しさに胸がつまりそうだった。
私達はまた、くだらないことで笑い合えるのだろうか。
たとえ、記憶がお互いにないのだとしても。
今まさに、私とアニが、こうしてお揃いのブレスレットを左腕に飾っているみたいに。