【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第49章 ◇第四十八話◇ポジティブシンキング【恋の行方編】
じーっと私の目を見返していたペトラが、ふいに表情をやわらげた。
「私はいつだって、好きな人が好きだよ。」
「でも、あんなに真剣にー。」
「そうだぞ、。ペトラはいつだって、おれのことをー。」
「うるさい、黙れ。」
ペトラがピシャリとオルオのセリフを切り捨てる。
だが、当の本人は、特に気にする様子もなくデスクの椅子に座って、私がさっきまとめた書類を適当にペラペラとめくっている。
ペトラが私に書類の書き方を教えてくれている間も、何もすることがなくて暇だったらしいオルオは、デスクの椅子に座って片側の脚でバランスをとって遊んでいた。
別に部屋にいるのはいいし、書類の書き方を教えてくれとも思わない。これっぽっちも。
でも、オルオの体重を片側の脚だけで支える椅子が悲鳴を上げていて、軋む音がうるさくて気が散るからやめて欲しかったー。
「ていうか、やっぱり、オルオいるよね?オルオだよね?」
「そうだよ。オルオだよ。」
「やっぱりそうだよね?普通にペトラと一緒に部屋に入ってきて、
普通に椅子に座って遊びだすから、私だけに見えてる魔物かなにかかと思ってたよ。」
「ごめんね、のとこに行くって言ったら、
勝手についてきたの、この魔物。」
「そうか。お前にはおれが幸せを運ぶ使者に見えたんだな。
それも仕方ねぇ。だがな、おれは惚れた女にしか優しくしねぇ主義なんだ。
傷つけちまって、悪かったな。」
「ねぇ、もしかして私今、告白もしてないのにフラれたの?」
「無視するのが一番だよ。」
「フッ…、おれを束縛するつもりか、ペトラ?
おれの女房を気取るには、まだ必要な手順をこなしてないぜ?」
「…。」
全く話が噛み合っていないオルオに、苛立ちや呆れを通り越して、尊敬の念を抱いてしまう。
彼のポジティブシンキングをほんの少しでも分けてもらえたら、人生はもっと楽しくなるんじゃないかと本気で思う。
「それと、リヴァイ兵長のことはオルオも知ってるから気にしなくていいよ。」
「え?知ってるって?」
「私との好きな人、気づいてたらしいよ。」
「え!?」
私は目を丸くして、オルオを見た。
片方の口の端を上げるオルオの得意気な表情に、無性に腹が立つ。