【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第49章 ◇第四十八話◇ポジティブシンキング【恋の行方編】
「リヴァイ兵長とはどうなの?」
唐突にペトラから出てきた名前に、テーブルの上に散らばる書類をまとめていた私の手が止まる。
星を見るために壁の上に連れて行ってもらった夜のことを思い出す。
私の悪ふざけに機嫌を悪くしたかと思ったが、あれからは特に雰囲気が悪くなることもなく、だからといって良い雰囲気になるわけでもなく、終始上司と部下としての会話をして終わった。
「何かあった?」
「え?ううん、何もないよ。」
私は首を横に振ると、まとめた書類をデスクに持っていく。
残ったのは、私が1人でも出来そうな書類だけだ。
なんとか頑張れば、今夜中に終わるのではないだろうか。
「ねぇ、絶対何かあったでしょ?」
「ないってば。」
書類をデスクに置いた私は、困ったように笑って言って、ペトラの隣に座った。
何かあるとすれば、何かあればいいと愚かな期待をしてしまった結果、無駄な勇気を出して悪ふざけのノリで仕掛けたら、返り討ちにあったくらいだ。
「私には知る権利があると思います。」
ペトラの真剣な瞳が、ずいっと私の顔の前にやってくる。
心底真面目そうなその表情に、私は思わずたじろいでしまう。
「…ねぇ、ペトラは本当にもういいの?」
ペトラは本当に、リヴァイ兵長のことはもうなんとも思っていないのだろうか。
吹っ切れているような表情をしているペトラを前にしても、私はまだ信じられなかった。
だって、彼女は本当にリヴァイ兵長のことを大切に想っていて、真っすぐに恋をしていたのを知っているから。
それに、リヴァイ兵長のことを諦めないと宣言したときの強い瞳。あの瞳が、どうしても忘れられないのだ。
「何が?」
「だから、リヴァイ兵長のことだよ。」
「それはもういいんだってば。」
「もし、私のことを心配してるなら、気にしないで。
私も好きな人は好きでいる。だから、ペトラも好きな人を好きでいてほしい。」
本心だと分かってほしくて、私はペトラの目を見て言った。
ルルの受け売りだけれど、本当にそう思う。
好きな人を好きでいようと決めた途端、想いは抱えきれないくらいに溢れてしまって、溺れそうになって苦しいこともあるけれど、でも、後悔して悲しむことはないと思えるのだ。
だから、ペトラにも、好きな人を好きでいてほしい。