【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第5章 ◇第四話◇指輪【調査兵団入団編】
相も変わらず窓の外を眺めていると、母親に声をかけられた。
振り返ると、そこには1週間ぶりに再会する恋人、ルーカスの姿があった。
彼は、私の姿を見るとホッとしたような表情を見せた。
こんな状態では、お互いに連絡をする手段もなく、生きていることを伝えることさえ出来ていなかったことの罪深さを、今さら実感した。
「ごめんなさい、心配させてしまって…。」
「いいんだよ。君が無事なら、それで。」
彼はそう言うと、私の隣に腰を下ろした。
そして、左手の薬指で自慢気に光り輝く大きなダイヤを愛おしそうに撫でた。
「お母様に聞いたよ。」
「え?」
「君はこの指輪を探すために、一度助かったのにまた危険なところへ戻ったんだってね?」
「あ…。」
仲間を大切に思うのもいいが自分の命も大切にしろ―。
そう叱った駐屯兵を思い出した。
あのあと、ようやく再会した家族にも、仕事場の先輩にも、指輪なんかのために命を捨てるような真似をするなと叱られた。
だから、ルーカスにも叱られてしまうと思った。
でも、違った。
「その話を聞いて、嬉しかったよ。」
「え?」
「それだけ、僕のことを愛してくれているってことだろう?」
ルーカスはそう言うと、愛おしそうに私の髪を撫でる。
本当に、本当に、心から嬉しそうで、私はなぜかすごく嫌な気分になった。
そして、それが不思議でもあった。
だって、恋人に叱られずに済んだ上に、自分のした行動を心から喜んでくれているのに、どうして私は違和感を覚えるのだろう。
「絶対に幸せにするからね。」
ルーカスのそんな言葉を聞きながら、私はヒルラのことを思い出していた。
『よかったわね。絶対に幸せになりなさいよ。』
ヒルラが最期に見せてくれた笑顔とピースサイン。真っ赤なマニキュアの綺麗な爪。
突然に鮮やかに蘇る記憶。
(あぁ…。そうか、私は…。)
気づいてしまった。
そうすると、溢れ出す涙を止められなくなった。
後から、後から、頬を流れ落ちていく涙を見て、ルーカスは勘違いをしたようだった。
「泣くほど喜んでくれるなんて、僕は本当に幸せものだよ。」
嬉しそうなルーカスに抱きしめられながら、私は、泣きながらヒルラのことを思い出していた。