【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第5章 ◇第四話◇指輪【調査兵団入団編】
「本当にするの?」
キッチンで紅茶を作っていた母が、トレイを持ってやってきた。
礼を言って受け取ってから、さっきの質問に答えた。
「するよ。こんなチャンスないもん。」
「それは、あんな素敵な人と結婚出来るチャンス?
それとも、内地に行けるチャンス?」
「…貴族でカッコよくて優しくて素敵で、そんな完璧な人と結婚するチャンスよ。」
間違ったことを言ったつもりはない。
でも、母は小さく息を吐くと、私の顔を真っ直ぐに見据えた。
真面目な話が始まる前だ。あまり良いことを言われる気がしない。
「は本当にルーカスくんのことが好きなの?」
「好きよ。」
「愛してる?」
「…愛してる。」
「それはどんな苦労をしてもいいから、一緒にいたいと思うほど?」
「貴族で優しいルーカスと結婚して、苦労なんてしないわよ。」
「結婚すれば内地での生活になるのよ。今までと全く違う暮らしの中で
ルーカスくんのご両親とうまくやれるの?」
「ルーカスがいるならきっと大丈夫よ。」
「ルーカスくんだっていつものそばにいられるわけじゃないのよ。
育ってきた環境だって違うのにー」
「何が言いたいの?私の結婚が嬉しくないの?」
ルーカスと恋人になった時から、母はずっと私の気持ちを削ぐようなことばかりを言う。
確かに身分の違いはある。
娘が苦労をするんじゃないかと心配してくれているのも分かる。
でも、ルーカスは身分の違いを乗り越えて、結婚をしたいと言ってくれたのだ。
しかもー。
「家族で内地に移住出来るんだよ。もう巨人に襲われることもない。
そんな幸せなことないじゃない!」
思わず声を荒げてしまう。
そうじゃなくても結婚に対してナーバスになっているのだ。
マリッジブルーの娘に、これ以上、不安を煽るようなことを言わないでほしい。
「私もお父さんもが本当に愛してる人と結婚してくれるなら
それでいいのよ。が幸せになるのなら、私達にとってそれ以上の幸せはないの。」
それだけ言うと、母はまだ少し残ったコーヒーカップを持ってキッチンへと下がった。
幸せになることが、私をこの世に誕生させ無償の愛を送り続けてくれる両親への恩返しになるのなら、私は絶対に誰よりも幸せになる。
それがルーカスとの結婚だと、そう、信じてる。