【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第42章 ◇第四十一話◇まだそばにいたい【調査兵団入団編】
大切なことを忘れていたー。
訓練の準備を放り出し、クリスタは兵舎に走りだした。
「あッ!サボるなんてズルいですよ!!」
後ろからサシャの声がしたけれど、言い訳をする暇なんてなかった。
どこから情報を持ってくるのかは知らないが、情報通のユミルが、が兵団を去るのは今日の午前中だと言っていた。
急がないと、手遅れになってしまう。
「おいおいッ!どうしちまったんだよッ!?」
ユミルが追いかけてきて、驚いた顔でクリスタを見やる。
いつだって人一倍真面目なクリスタが、訓練の準備を放り出して走り出すなんてありえないと思っているのだろう。
自分だってそう思っている。
こんなのありえない。ありえないー。
「私、やっぱり、さんには調査兵団にいてほしい…!」
クリスタの必死の思いに、ユミルは僅かに眉を顰める。
非難されているのが、顔を見ていないクリスタにも雰囲気で分かるほどだった。
「あの死んだ目を見ただろ。ありゃもう無理だ。
また地獄に引きずり込もうってんなら、手伝ってやってもいいぜ?
でも、一緒にまた仲良くしてぇってんなら、諦めな。」
隣を走りながらも引き留めはしないユミルは、いつも判断はクリスタに委ねる。
そして、ユミルの言うことはいつも正しい。
分かっている。
でもー。
「わかってる。私にはさんの心は救えない。」
「わかってんなら、諦めて訓練所に戻ろうぜ。
早くしねぇとコニーあたりがチクッて、上官に叱られちまう。」
「ユミルだけ戻って。私は行かなくちゃいけないのっ。」
「だから、どこに行くってんだよ。」
「さんを救ってくれる人、思い出したの!」
「はぁ?そんなのいないんだよ、もう。この世にはな。」
ユミルが僅かに目を伏せていった。
彼女が思い浮かべた人物と、クリスタが信じている人物はきっと同じー。
「私達の声は届かなくても、ルルさんの声ならきっと…!」
クリスタは走った。
出来る以上に速く、速く。
もしかしたら、訓練兵団にいたときの最高記録を更新してるんじゃないかと思うくらいに速く走った。