【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第39章 ◇第三十八話◇仇【調査兵団入団編】
ここ数日のリヴァイの行動を知っている誰もが、彼の苦悩に気づいていた。
気づいていて、何もしてやれなかった自分を責めながらこの日を迎えた。
きっと、他の兵士達だって同じだ。
仲間の死を、仕方がなかった、なんて思っている兵士はいない。
みんな、必死にもがいているのだ。
「お前の娘は勇敢な兵士だった。」
「…ッ!そう言えば、親が喜ぶとでも思ってるのか!?
少なくとも私達は違うっ!!情けない兵士でも、生きてくれさえいればよかった!!」
「そうか。だが、お前の娘は本当に勇敢な兵士だったんだ。
大事な友人を命を懸けて守ったんだからな。」
「大事な友人…?その悪魔がか!!ソイツは自分の身代わりにルルを殺したんだろ!!」
「いいや、違う。お前の娘は、自ら望んで身代わりになった。」
「そんなわけないッ!!ルルはそんなことが出来るような子じゃないッ!!」
「おれはこの目で見てる、お前らの娘の勇敢な姿を。」
「そんな馬鹿な話を信じるとでも思うか!」
「信じるも信じねぇも、それが事実だ。
そして、お前らの娘を救うためにコイツが巨人の群れに飛び込んだのも事実だ。」
「な…っ、そんなわけないだろ!!ソイツは自分で認めてー。」
「ルルの体半分は巨人の口の中で、は無傷で、
あのとき、おれが助けられる命には限りがあった。
そして、ルルはおれに、自分を見捨ててを連れて逃げてくれと言った。
」
「ふざけるな!!自分達の都合のいいように話を作りかえるな!!」
「おれは、お前らの娘を見捨てて、コイツの命を守る方を選んだ。」
「…!!」
ルルの父親は、リヴァイとを交互に見比べる。
はボーッと座っているだけの人形のように成り果てていて、何を考えているか分からなかったに違いない。
彼は、誰を信じるべきか否か迷っているようだった。
「もし…、身体が巨人の口の中にいるのがうちの娘じゃなければ…、
うちの娘は生きてたのか…?状況が違えば、うちの娘は…。」
「おれはあのとき…ー。」
「リヴァイ、もういい。喋るな。」
遅れてやってきたミケに制止され、リヴァイは口を噤む。
自分が今、何を言おうとしていたのかを理解したのか。自分がルルの両親に残酷な真実をつきつけようとしていたことに驚愕し、目を見開いた。