【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第39章 ◇第三十八話◇仇【調査兵団入団編】
ようやくリヴァイの手がナイフから離れ、ルルの父親は震えながら後ずさる。
カラン、とナイフが落ちて、血が飛び散った。
「ルルが…、その娘を助けてくれって言ったから…?
その娘がルルを助けようと巨人に飛び込んだから…、だから、何だって言うの…?」
涙も枯れ果てた様子のルルの母親は、ふらついた足取りでゆらゆらとの方へと歩み寄る。
「ルルがその娘の代わりに死んだのに、かわりはないじゃない…。
私の可愛い…、可愛い娘を…返して…。返してよ…。」
ルルの母親が落ちていたナイフを拾い上げ、に振り落としたのは、あっという間の出来事だった。
ルルの父親でさえ想像できなかったその行動に、誰も動けなかった。
身を挺してを守ったリヴァイを除いては、誰もー。
「…っ!」
リヴァイが痛みに顔を歪める。
左腕を切ったナイフは、すぐにミケに叩き落された。
ナイフが地面に落ちた音にハッとして、ハンジとモブリットがルルの両親を拘束する。
「殺してよ…。」
リヴァイの腕に守られながら、が言う。
「おれが悪かった。」
の無事が分かっても、リヴァイは腕を離さなかった。
強く強く抱きしめて、に謝り続ける。
「ごめんなさい…、ルル…。私が…、殺した…。
なんで、生きてるの、私…死にたい…。殺して…。
誰か、殺してよ…。」
「悪かった。おれが悪かったから、もうやめてくれ…。」
いつもは抑揚のないリヴァイの低い声が、悲痛な叫びに聞こえた。
モブリットの腕の中で、ルルの父親は呆然と立ち尽くし、ルルの母親が、ハンジの腕の中で泣き続ける。
救いようのないこの悲劇を誰にどうすることが出来るのだろう。
このどこにも悪はないのにー。