【リヴァイ】いつか地平線を眺めるなら【進撃の巨人】
第4章 ◇第三話◇存在しない兵士【調査兵団入団編】
駐屯兵の彼は、表情に怒りを滲ませ、何か言い返そうとしたようだった。
だが、悪いが、リヴァイの言っていることに、間違いはない。
自分の思い込みで彼女の話をきちんと聞こうともせず、自分達が守るべき存在である民間人を巨人討伐の前に無理やり引っ張り出したのは、彼だ。
その挙句、駐屯兵の多くが彼女に助けられているのをハンジやモブリットだけではなく、彼もその目でしっかり見ていたのだ。
仲間のためだからと命を粗末にするな―と忠告はしていたようだが、彼女はそれを守らなかったようだ。
これで、民間人である彼女が巨人が食われていたら、彼女を戦場に出した彼の除隊だけでは済まない。
駐屯兵団も大変なことになっていただろう。
それを彼も十二分に理解しているようで、悔しそうに唇を噛みながらも、消え入りそうな声で謝罪をし、頭を下げた。
「リヴァイ兵士長の言う通りだ。我々駐屯兵団は民間人を危険に晒してしまった。
それについては真摯に受け止め、罰を受けよう。」
「ピクシス司令っ!悪いのは私であります!!」
「いいや、ワシもあのとき、彼女のことは見たことがないと思ったのだ。
おかしいと思ったのに、巨人の討伐に気をとられて深く考えようとしなかった。
その結果、彼女の話をきちんと聞かずに恐ろしい作戦に参加させてしまった。」
「…すみません…っ。」
駐屯兵は、これでもかというほどに頭を下げる。
これが公になれば、きっと彼は罰を受ける。そして、駐屯兵団も―。
だが、それを避ける方法はある。その話をするために、ハンジはピクシス司令らをエルヴィンのもとへ連れてきたのだから。
「そこで、私は彼女を本当の兵士に―。
調査兵団の兵士にしてしまおうと思っています。」
エルヴィンの眉がピクリと動いた。
突拍子もないことを言い出した自覚はある。
だが、何も言ってこないところを見ると、話を聞く気はあるのだと思われる。
巨人さえも恐れおののくような形相でリヴァイが睨んでくるが、ハンジは話を続ける。
あのとき巨人を討伐するよりも駐屯兵を助けることに重きを置いていた彼女は、巨人討伐の原理もおそらく分かっていないし、立体起動装置や超硬質スチールの技術は未熟だ。
だが、巨人討伐数においては、他の兵士を凌いでいた。
おそらく、調査兵団の兵士のベテラン達と同じくらいか少し下くらいだろう。